1958年① ムナーリ
ブルーノ・ムナーリとレオ・レオーニの年表を読むこの不定期連載、1か月ぶりに再開しよう。
久しぶりなので、今回と次回はひとりずつ、ゆっくりと読み進めていこう。まずはムナーリの年譜から。
1958年、ムナーリは51歳になる。グループ展を4回と個展を2回開催し、ムナーリが関わった書籍も3冊出版されている。3冊の本のうちの1冊、『今日の芸術の記録 1958』には、《旅行のための彫刻》のテキストと三次元のオブジェが挿入されていたという。本に立体的なオブジェを挿入?此は如何に?と、図録のページをパラパラと繰って図版を探したが、見当たらなかった。だが、《旅行のための彫刻》ならいくつか載っている。厚紙を折ったり切ったりして立ち上がらせた立体作品である。折りたたんで持ち運ぶことができる。図版で見るムナーリの作品は、持ち運びできるサイズであるにもかかわらず、元気いっぱい、飛び出してくるように見えた。
面白そう、私もやってみたい!旅行のお供に、連れて行きたい!!と、ちょうど、お菓子の空き箱から切り出した厚紙がたくさんあったので、図版を見ながらカッターでキコキコと切れ目を入れ、見よう見まねで折り曲げてみた・・・が、どうにもこうにも、ちまちまとした、真面目くさった感じになってしまい、さまにならない。
(ブルーノ、難しい・・・難しいよ・・・。)心の中で《旅行のための彫刻》の作者に呼びかけながら、いじり過ぎてぐちゃぐちゃになってしまう前に手を止めた。
この年の7月、ムナーリはミラノの自宅で美術評論家の瀧口修造(1903-1979)の訪問を受ける。図録に収録された有福一郎「日本におけるブルーノ・ムナーリ」によると、この訪問で瀧口は《偏光の映写》や《折りたたみのできる彫刻》などの作品と出会ったそうだ(p.317)。それから2年後、先の有福によると、滝口が運営委員を務めていた東京の国立近代美術館、草月アートセンター、そして産経会館国際ホールでムナーリの《偏光の映写》の上映会が開催されることとなる。日本における本格的なブルーノ・ムナーリ受容は、このくらいの時期に始まったようだ。
【書誌情報】
奥田亜希子編「ブルーノ・ムナーリ年譜」『ブルーノ・ムナーリ』求龍堂、2018年、pp.342-357
有福一郎「日本におけるブルーノ・ムナーリ」『ブルーノ・ムナーリ』求龍堂、2018年、pp.316-323 ※執筆担当者の表示なし
遠藤知恵子(センター助手)
ムナーリの《旅行のための彫刻》を 真似して作ったオブジェはこちらです。 |