2023年6月29日木曜日

リレー展示「本について話そう」④6月29日~7月6日

センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行っております。今回は、全8回の連続展示のうちの4回目です。

 

山口博監修、正道寺康子編

『ユーラシアのなかの宇宙樹・生命の樹の文化史』

勉誠出版、2018

 書誌情報をクリックすると、キャプションの代わりとなるテキストのリンクが開きます。

 展示期間中も貸し出しをすることができます。どうぞお気軽にご利用ください。

2023年6月23日金曜日

リレー展示「本について話そう」③6月23~28日

 センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行なっております。今回は、全8回のうちの3回目です。

齋木喜美子『沖縄児童文学の水脈』関西学院大学出版会、2021年

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 展示期間中も貸し出しをすることができます。どうぞお気軽にご利用ください。

2023年6月16日金曜日

第6回書評コンクール 猫村たたみ×熊沢健児トークセッション

猫村たたみ
(センター三文庫の守り猫)
猫村:皆さま、ご機嫌いかがかにゃ? センター三文庫の守り猫、猫村たたみですにゃ!

熊沢:どうも、熊沢健児です。書評コンクールの投票結果が出たね。

猫村:にゃ! 今回も個性豊かな書評が集まったのにゃ。コンクールにご応募くださった皆さま、投票に参加してくださった皆さま、そして、参加はしなくとも関心をお寄せくださった皆さま、ありがとうございますにゃ!
熊沢:いつも見守って下さる皆さまにも、心よりお礼申し上げます。

熊沢健児
(ぬいぐるみ・名誉研究員)

猫村:第6回書評コンクールの振り返りを始めるのにゃ! 

熊沢:最初の書評は桐江さんが書いてくださった、『パールとスターシャ』の書評だね。

猫村:アウシュビッツ絶滅収容所という実在の場所、そして、実在の人物をモデルとしたキャラクターが出てくる物語にゃって。私、この作品は読んだことがないのにゃけど、興味を持ったのにゃ。舞台が収容所だということから、目を覆いたくなるような出来事が起きていることは容易に想像がつくのに、「美しい物語」ってどういうことかにゃ~って思ったのにゃ!

熊沢:そうだね。それから、主人公である双子の人物像を中心に作品概要を紹介した上で、「希望ある結末が待っている」という一言で、この作品に興味を持ち始めた人の背中をそっと押してくれる。執筆者の観点がはっきりしていて分かりやすいだけでなく、優しさがあっていいなと思った。

猫村:にゃ! 愛ある書評にゃ!

熊沢:うん。私もこういう書評を書けるようになりたい。

猫村:愛といえば、しあわせもりあわせさんが紹介する図鑑も、愛に溢れているのにゃ。

熊沢:監修者の昆虫愛を読み取って、しあわせもりあわせさんもちゃんとそれに反応している。

猫村:コール・アンド・レスポンス!

熊沢:いいこと言うね。ある書物が読まれるとき、その書物の作り手とその受け取り手との間には目に見えない心の交流が生まれている。普段は目に見えない心の交流が、書評という形で可視化されると、なんだかすごく励まされるような気がするよ。

猫村:そうにゃね。

熊沢:特に図鑑の類は、その図鑑が扱っている分野が好きで好きでたまらない子どもたちが、それこそ隅から隅まで余すところなく熟読して、写真を見つめる。図鑑って、実はものすごく愛されている書物なんじゃないだろうか。

猫村:児童書界の人気者にゃ!

熊沢:そうかもね。

猫村:クマのプーさんも人気者にゃ。

熊沢:西大條さんの書評だね。展覧会の図録だから、展示風景にも触れてくれている。いいなあ、私も行きたかったよ。展示空間って、大事だよね。作品をどう見るかって、展示空間の設計次第だもの。まっさらな気持ちで観客を展示品に向かわせようとする白い壁も、テーマパークみたいに気分を盛り上げるための装飾や演出も、どちらも私は好きだな。

猫村:にゃ~む。PLAY! MUSEUMは気分を盛り上げてから原画に向わせてくれる展示にゃったみたい。

熊沢:うん。書物という形自体が独自の空間表現だから、展示がどんなだったのか気になるな。

猫村:にゃ! 西大條さんの書評を読むと、図録のデザインも展示空間のデザインと連動していることが分かってさらに興味深いのにゃ。

熊沢:遊び心たっぷりの図録。いいなあ。私も少し、遊びたい。

猫村:にゃにゃ! 何して遊ぶのにゃ? おはなし会で良ければ、いますぐにでも私が開くのにゃ。

熊沢:君が書評で取り上げた『いちじくのはなし』は、いちじくのおはなし会だったね。

猫村:そうなのにゃ。面白かったのにゃ~。

熊沢:人に読んであげたり、人から読んでもらったりするといいって?

猫村:私はそう思ったのにゃ。

熊沢:それってつまり…いちじくが語る本編とは関係のない、ということは、言語化されていない、絵による細部の描写から、さまざまな小さな物語を想像することができる…そういうこと?

猫村:そうなのにゃ!

熊沢:いいね。この振り返りが終わったら、ふたりで1話ずつ『いちじくのはなし』を読み合おう。

猫村3話あるからそのうちの2話は私が読んであげるのにゃ。熊沢君には息抜きが必要にゃ!

熊沢:あはは…確かに。私はマンガが好きでよく読むけど、自分から好んで読む作品は、息抜きにはなりそうにない、重たい作品が多いかもしれない。

猫村:今回、熊沢君が取り上げた『光の子ども』もそうだったのかにゃ?

熊沢:う~ん。それは、読む人によると思う。

猫村:そうにゃね。感じ方は人それぞれにゃ。『光の子ども』読書会もしてみたいのにゃ~。

熊沢:そうだね。ほかの人がこの作品を読んでどう感じるか、知りたいな。

猫村:にゃ~む、してみたいことがたくさんあるのにゃ。

熊沢:うん。そうそう、遠藤さんが取り上げた『ちいさな労働者』だけど、この本に収められているのと同じ写真を、大学図書館の本で見ることができるよ。PHOTO POCHEシリーズのLewis W. Hine. (Centre National de la Photographie, Paris, 1992)という本。『ちいさな労働者』ではトリミングされていた写真もあるから、こうしてもう1冊、別の本を確認するとまた見え方が変わって面白いね。

猫村:インクの濃さによってだいぶ印象が変わってくるのにゃ~。

熊沢:ところで、以前、君は写真が好きだと言っていたよね。それなのに、どうして君のプロフィールはセンターの助手さんが描いた似顔絵なの? 写真にすれば良いのに。

猫村:私、猫またにゃから、写真にはもやっとした靄しか写らないのにゃ。にゃから、プロフィールは念写か、似顔絵にするしかないのにゃ。

熊沢:…え? 念写って、実在するの? 

猫村:妖怪仲間のみんなと風流踊りツアーに行ったときの集合写真を見せてあげるにゃ。(猫村、鞄から小さなアルバムを取り出す。)昔懐かしのレンズ付きフィルムで撮ったのにゃよ。

熊沢:ねえ、念写って実在するの?(お願い、答えて!)

猫村(猫村、写真に夢中で聞いていない。)このオレンジ色っぽい靄が私、その隣の緑色っぽい靄が女学校からのお友達のろくろっくびさん、そのまた隣の青っぽい靄がお向かいのお家に住んでいる一つ目小僧君で、その上の紫色っぽい靄がぬりかべ先輩で…

熊沢:心霊写真(生まれて初めて見た…!)。

猫村:心霊写真にゃなくて、妖怪写真にゃ!

熊沢:…。

猫村:みんな、いいひとたちにゃよ。

熊沢:そうか…。

猫村:そうなのにゃ!

 

皆様、「児童文化研究センター主催 第6回書評コンクール」に最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。次回の書評コンクールは来年、春頃に開催する予定です。皆様のご参加を、心よりお待ちしております。

第6回書評コンクール 結果発表

第6回書評コンクールの投票結果を発表いたします。


書評番号1 桐江さん(教職員)       得票数5

書評番号2 しあわせもりあわせさん(一般) 得票数2

書評番号3 西大條優香さん(学生)     得票数2

書評番号4 猫村たたみ(その他)      得票数2

書評番号5 熊沢健児(その他)       得票数0

書評番号6 遠藤知恵子(教職員)      得票数0

 

 最も得票数が多かったのは、書評番号1の『パールとスターシャ』の書評を書いた、桐江さんでした。おめでとうございます!

 ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

2023年6月8日木曜日

リレー展示「本について話そう」②6月8~21日

 センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行なっております。今回は、全8回のうちの2回目です。


 書誌情報をクリックすると、キャプションの代わりとなるテキストのリンクが開きます。

 展示期間中も貸し出しをすることができます。どうぞお気軽にご利用ください。

2023年6月2日金曜日

熊沢健児の気になる収蔵品展

 宮城県仙台市にある宮城県美術館が、改修工事のためしばらく休館となることを知り、新幹線のチケットを予約して朝いちで行った。本館1階で今月18日まで開催される、「リニューアル直前!宮城県美術館の名品勢ぞろい!」展である。

どうしても見ておきたかったのは、昨年亡くなられた山脇百合子さんの原画作品の展示「ありがとう山脇百合子さん」である。展示室に入ってすぐ、『いやいやえん』や『ぐりとぐらとすみれちゃん』、『やまのこぐちゃん』、『ブラウニーものがたり』など、絵本や紙芝居、挿絵の原画をいくつも見ることができた。「ぐりとぐら かるた」の原画も堪能した。

原画の展示なので、言葉はもともと絵にかき込まれているものと、展示室の壁にキャプションとして添えられた必要最小限の説明のみ。でもこれが良かった。なまじ文字が読めてしまうと、言葉に気を取られて充分に絵を注視するということが難しくなる。ほとんど文字無しの状態で原画と向き合っていると「あれ? こんなところにこんなものが…」という発見がある。もちろん、原画に書き込まれた指示や、絵を構成する要素の異同(切り取って少しずらして貼りつけた雲など)といった、作品制作のプロセスを知る手がかりも満載である。

あああぁぁぁ…いつまでも見ていたい、いっそこの部屋に住みたい! そんなことを思いながら、一点一点、惜しみつつ見て歩き、結局2往復した(昼近くなってだんだんお客さんが増えてきたので、3往復目は断念した)。この美術館は絵本原画を収集対象としていて、『こどものとも』の初期の原画を中心におよそ550タイトルを収蔵している。

また、宮城県美術館といえばクレーとカンディンスキー。日本国内の美術館では最大のクレー・コレクションを有しており、収蔵作品数は35点。カンディンスキーの初期の作品〈商人たちの到着〉(1905年)はぱっと見た感じ後年のコンポジションシリーズとはだいぶ印象が異なるが、黒い下地の上に置かれた色彩が目に心地よく響く。バウハウスでは同僚だった彼らの作品が、一つの展示室に仲良く並んでいるのを見るにつけ、「友達っていいな…」などと思うのだった。

宮城県にゆかりの作家や東北出身の画家の作品、佐藤忠良(言わずと知れた絵本『おおきなかぶ』の原画作者である)の彫刻やドローイング、それに具体美術協会の人たちの作品など、個性的なコレクションを有する宮城県美術館だが、その中でも特にユニークなのは、「洲之内コレクション」ではないだろうか。「買えなければ盗んででも自分のものにしたい絵なら、まちがいなくいい絵である」という物騒な名言を残した画廊経営者、洲之内徹が収集した絵画を、この宮城県美術館が収蔵している。

洲之内コレクションが展示されている展示室の一角は、なんだか美術館ではないような不思議な空間である。いつまでも眺めていたいし、なんならこの部屋のこの場所に棲みついてしまいたい。絵本原画の部屋では興奮度MAXのアドレナリンに浸りきった脳で「この部屋に住みたい」と思ったのだが、洲之内コレクションを前にしたときは、静まり返った気持ちで同じことを思った。最初に絵を見たときの「あぁ、いいなぁ」という呟きが、絵から離れた後もいつまでも頭の中に響き続けるような、忘れがたい魅力を湛えた絵が並ぶ。

 

さて、いつまでも絵を見ていたいけれど、ここは東北。定刻通りに新幹線に乗らないと、明日の仕事に間に合わない。また会おう、宮城県美術館!


熊沢健児(ぬいぐるみ・名誉研究員)

久々の遠出を終えて、センターに
帰って来たところ。ポシェットの
羊羹を補充している。


武井武雄展、神奈川近代文学館で開催!

 今月3日より、横浜・山手の「港の見える丘公園」で武井武雄(1894-1983)の刊本作品が展示されることとなりました。展示会のタイトルは「本の芸術家 武井武雄展」です。

 12年前に武井武雄刊本作品全139点が寄贈された神奈川近代文学館では、それら全てを閲覧室で手に取って見ることができます。武井の一連の刊本作品は、毎回、武井が一から企画し、デザインと本文を手がけたうえで、必要に応じてその道の達人である人たち(たとえば、伝統工芸の職人さんなど)と連携して制作していました。

 私の研究対象とする武井武雄の作品が、それも、地元神奈川で展示されるのですから、これはもう、いてもたってもいられません。この展示に関しては全くの部外者ではありますが、いつかどこかで叫びたいと思っていた武井の面白さについて、「ぜひチェックしていただきたいポイント」として、とりあえず三つだけ紹介させてください。

 

ポイント1 武井武雄はMr.几帳面

 

 武井武雄は児童書の挿絵や絵本の絵を手がけ、自らも物語を書いた作家です。郷土玩具蒐集が嵩じて分厚い本を書いていますし、さまざまな技法を用いて版画での表現を楽しんでもいます。そんな多才な人物でしたが、強いてただ一言で創作者としての武井を形容するならば、「几帳面」。

刊本作品をつくるときには、創作ノートに本のデザインや下図を記すだけでなく、制作費もきっちり計算し、1冊当たりの制作費を割り出していました(Mr.明朗会計)。亡くなる直前まで、几帳面にコツコツと作り続けた成果がこの一連の刊本作品です。ぜひ、創作ノートとともにじっくり楽しんでください。

 

ポイント2 実験的な試み

 

 刊本作品は様々な素材と技法を組み合わせて制作、部数限定で会員向けに頒布された、一連の造本美術作品です。異素材の組み合わせや、当時としては斬新な印刷方法(静電気を使った特殊な印刷など)、さまざまな創意工夫を凝らした版画の技法などを用いて制作しているところも、ぜひチェックしてください。ただし、制作過程が面白いのに、見た目が地味な作品も実はあります。

 見た瞬間に「うわー、綺麗!」と感嘆してしまうような作品もある一方で、ちょっと見ただけではその新しさや凄さが伝わらない作品もありますから、展示をみて、もしご興味をもっていただけたら、武井の『本とその周辺』(1960年/文庫版1975年)で確認してみてください。この本に、技法の一部が紹介されています。

 

ポイント3 表現者と鑑賞者の交流

 

武井は刊本作品友の会会員のことを「親類」と呼び、「親類通信」で刊本作品の頒布や制作プロセスなどについての情報発信をしていました。また、刊本作品のコレクションをきっかけに、一部の会員の間では親しい交流が生まれました。

1955年発行の『ARIA』は抽象的な版画の連作で構成されている本ですが、武井は「親類」たちにこの本に寄せて詞文を書いてもらい、『ARIAに寄せる』というもう1冊の本を制作しています。作者の意図は鑑賞者にどこまで伝わるだろうかという実験です。ただつくって満足するのではなく、その表現を他人にどこまで受け取られるものかということを気にかけていました。

 

以上、「ぜひチェックしていただきたいポイント」を、「本の芸術家 武井武雄展」開催直前にお伝えいたしました。

 

遠藤知恵子(センター助手)

2023年6月1日木曜日

リレー展示「本について話そう」① 6月1~7日

 センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行なっています。展示期間中も貸し出しをすることができます。どうぞお気軽にご利用ください。

国岡晶子「ブックトーク『原発と放射能』

——確かな本を選びとるために」


 今回から、全8回の連続展示(リレー展示)を始めます。毎回、1冊ずつ展示します。書誌情報をクリックするとテキストのリンクが開きます。テキストでは、その本を展示することについての説明をしています。