2023年6月16日金曜日

第6回書評コンクール 猫村たたみ×熊沢健児トークセッション

猫村たたみ
(センター三文庫の守り猫)
猫村:皆さま、ご機嫌いかがかにゃ? センター三文庫の守り猫、猫村たたみですにゃ!

熊沢:どうも、熊沢健児です。書評コンクールの投票結果が出たね。

猫村:にゃ! 今回も個性豊かな書評が集まったのにゃ。コンクールにご応募くださった皆さま、投票に参加してくださった皆さま、そして、参加はしなくとも関心をお寄せくださった皆さま、ありがとうございますにゃ!
熊沢:いつも見守って下さる皆さまにも、心よりお礼申し上げます。

熊沢健児
(ぬいぐるみ・名誉研究員)

猫村:第6回書評コンクールの振り返りを始めるのにゃ! 

熊沢:最初の書評は桐江さんが書いてくださった、『パールとスターシャ』の書評だね。

猫村:アウシュビッツ絶滅収容所という実在の場所、そして、実在の人物をモデルとしたキャラクターが出てくる物語にゃって。私、この作品は読んだことがないのにゃけど、興味を持ったのにゃ。舞台が収容所だということから、目を覆いたくなるような出来事が起きていることは容易に想像がつくのに、「美しい物語」ってどういうことかにゃ~って思ったのにゃ!

熊沢:そうだね。それから、主人公である双子の人物像を中心に作品概要を紹介した上で、「希望ある結末が待っている」という一言で、この作品に興味を持ち始めた人の背中をそっと押してくれる。執筆者の観点がはっきりしていて分かりやすいだけでなく、優しさがあっていいなと思った。

猫村:にゃ! 愛ある書評にゃ!

熊沢:うん。私もこういう書評を書けるようになりたい。

猫村:愛といえば、しあわせもりあわせさんが紹介する図鑑も、愛に溢れているのにゃ。

熊沢:監修者の昆虫愛を読み取って、しあわせもりあわせさんもちゃんとそれに反応している。

猫村:コール・アンド・レスポンス!

熊沢:いいこと言うね。ある書物が読まれるとき、その書物の作り手とその受け取り手との間には目に見えない心の交流が生まれている。普段は目に見えない心の交流が、書評という形で可視化されると、なんだかすごく励まされるような気がするよ。

猫村:そうにゃね。

熊沢:特に図鑑の類は、その図鑑が扱っている分野が好きで好きでたまらない子どもたちが、それこそ隅から隅まで余すところなく熟読して、写真を見つめる。図鑑って、実はものすごく愛されている書物なんじゃないだろうか。

猫村:児童書界の人気者にゃ!

熊沢:そうかもね。

猫村:クマのプーさんも人気者にゃ。

熊沢:西大條さんの書評だね。展覧会の図録だから、展示風景にも触れてくれている。いいなあ、私も行きたかったよ。展示空間って、大事だよね。作品をどう見るかって、展示空間の設計次第だもの。まっさらな気持ちで観客を展示品に向かわせようとする白い壁も、テーマパークみたいに気分を盛り上げるための装飾や演出も、どちらも私は好きだな。

猫村:にゃ~む。PLAY! MUSEUMは気分を盛り上げてから原画に向わせてくれる展示にゃったみたい。

熊沢:うん。書物という形自体が独自の空間表現だから、展示がどんなだったのか気になるな。

猫村:にゃ! 西大條さんの書評を読むと、図録のデザインも展示空間のデザインと連動していることが分かってさらに興味深いのにゃ。

熊沢:遊び心たっぷりの図録。いいなあ。私も少し、遊びたい。

猫村:にゃにゃ! 何して遊ぶのにゃ? おはなし会で良ければ、いますぐにでも私が開くのにゃ。

熊沢:君が書評で取り上げた『いちじくのはなし』は、いちじくのおはなし会だったね。

猫村:そうなのにゃ。面白かったのにゃ~。

熊沢:人に読んであげたり、人から読んでもらったりするといいって?

猫村:私はそう思ったのにゃ。

熊沢:それってつまり…いちじくが語る本編とは関係のない、ということは、言語化されていない、絵による細部の描写から、さまざまな小さな物語を想像することができる…そういうこと?

猫村:そうなのにゃ!

熊沢:いいね。この振り返りが終わったら、ふたりで1話ずつ『いちじくのはなし』を読み合おう。

猫村3話あるからそのうちの2話は私が読んであげるのにゃ。熊沢君には息抜きが必要にゃ!

熊沢:あはは…確かに。私はマンガが好きでよく読むけど、自分から好んで読む作品は、息抜きにはなりそうにない、重たい作品が多いかもしれない。

猫村:今回、熊沢君が取り上げた『光の子ども』もそうだったのかにゃ?

熊沢:う~ん。それは、読む人によると思う。

猫村:そうにゃね。感じ方は人それぞれにゃ。『光の子ども』読書会もしてみたいのにゃ~。

熊沢:そうだね。ほかの人がこの作品を読んでどう感じるか、知りたいな。

猫村:にゃ~む、してみたいことがたくさんあるのにゃ。

熊沢:うん。そうそう、遠藤さんが取り上げた『ちいさな労働者』だけど、この本に収められているのと同じ写真を、大学図書館の本で見ることができるよ。PHOTO POCHEシリーズのLewis W. Hine. (Centre National de la Photographie, Paris, 1992)という本。『ちいさな労働者』ではトリミングされていた写真もあるから、こうしてもう1冊、別の本を確認するとまた見え方が変わって面白いね。

猫村:インクの濃さによってだいぶ印象が変わってくるのにゃ~。

熊沢:ところで、以前、君は写真が好きだと言っていたよね。それなのに、どうして君のプロフィールはセンターの助手さんが描いた似顔絵なの? 写真にすれば良いのに。

猫村:私、猫またにゃから、写真にはもやっとした靄しか写らないのにゃ。にゃから、プロフィールは念写か、似顔絵にするしかないのにゃ。

熊沢:…え? 念写って、実在するの? 

猫村:妖怪仲間のみんなと風流踊りツアーに行ったときの集合写真を見せてあげるにゃ。(猫村、鞄から小さなアルバムを取り出す。)昔懐かしのレンズ付きフィルムで撮ったのにゃよ。

熊沢:ねえ、念写って実在するの?(お願い、答えて!)

猫村(猫村、写真に夢中で聞いていない。)このオレンジ色っぽい靄が私、その隣の緑色っぽい靄が女学校からのお友達のろくろっくびさん、そのまた隣の青っぽい靄がお向かいのお家に住んでいる一つ目小僧君で、その上の紫色っぽい靄がぬりかべ先輩で…

熊沢:心霊写真(生まれて初めて見た…!)。

猫村:心霊写真にゃなくて、妖怪写真にゃ!

熊沢:…。

猫村:みんな、いいひとたちにゃよ。

熊沢:そうか…。

猫村:そうなのにゃ!

 

皆様、「児童文化研究センター主催 第6回書評コンクール」に最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。次回の書評コンクールは来年、春頃に開催する予定です。皆様のご参加を、心よりお待ちしております。