2019年7月25日木曜日

猫村たたみの三文庫(非)公式ガイド



猫村たたみの三文庫(非)公式ガイド (2)三文庫クイズ(入門編)にゃ!

 
 センター構成員の皆さま、ご機嫌いかがかにゃ?
 センター三文庫の守り猫、猫村たたみですにゃ。
 
今日は三文庫クイズ(入門編)をしたいと思いますのにゃ。
クイズは全部で5問。

クイズの答えは、この投稿の最後のところで全問まとめて発表いたしますにゃ。

皆さまはいくつ正解できるかにゃ~?

それでは第1問。(にゃにゃーん!)

まずはウォーミングアップにゃ。
児童文化研究センターの三文庫は光吉文庫・冨田文庫・金平文庫。
冨田文庫と金平文庫はセンターを入って左奥にあるのにゃけど、
光吉文庫はどこにあるか、分かるかにゃ?
 
2問。(にゃにゃーん!)

 センター三文庫は、それぞれ三人の先生から
 ご寄贈いただいたりお譲りいただいたりした資料がもとになっているにゃよ。
 皆さまは、その先生方のお名前を、フルネームで言えるかにゃ?
 センター構成員の皆さまなら、きっと簡単ですにゃ!

 第3問。(にゃにゃーん!)

 三文庫の本棚は、とってもユニークにゃ。
 その理由は、分かるかにゃ?    内の空欄を埋めて欲しいのにゃ!

三文庫は、それぞれの資料を所有していた先生方の    を反映しているから。

 第4問。(にゃにゃーん!)

 本棚を見ていただければ分かるとおり、三文庫には、貴重な資料が満載されているにゃよ。
 それぞれ、およそ何冊ずつあるか、皆さまは知っているかにゃ?
 答えて欲しいのにゃ!

 第5問。(にゃにゃーん!)

 三文庫の本には、どれも請求記号が付いているのにゃけど、
 光吉文庫、冨田文庫、金平文庫の請求記号は、それぞれに
決まったアルファベットの文字から始まるにゃよ。

アルファベットの文字を三つ、答えて欲しいのにゃ。

クイズは以上にゃよ。
クイズの答えはこの下にあるから、答えあわせをしてみてくださいにゃ。
何問、正解できたかにゃ~。

【クイズの答え】

1
これは、前回ご説明したから簡単にゃね。
正解は、「本館4階の児童文化研究室」にゃ!

 第2
 これも、簡単ですにゃ。
 正解は、「光吉夏弥」先生、「冨田博之」先生、「金平聖之助」先生にゃ!

 第3
 正解は、「研究内容」にゃ。
 答えを聞いて、な~んだ、そんなことかと思った人もいるかもしれないのにゃけど、
 大事なことにゃよ。
 大先輩の研究者の本棚を覗く、貴重な機会を、三文庫は提供しているのにゃよ。

 第4
 正解は、光吉文庫:約13000冊、冨田文庫:約16000冊、金平文庫:約6000冊。
 ふにゃ~、すごい数にゃね~。

 第5
 正解は、光吉文庫:M、冨田文庫:T、金平文庫:K
 先生方の苗字の頭文字にゃ!
 分かりやすいにゃ~。

 皆さま、クイズはいかがでしたかにゃ?
 ちょっと簡単すぎたかもしれないにゃね~。
 次回はもう少し難しい問題をご用意いたしますにゃ。

それでは、皆さま、ごきげんようにゃ~。


児童文化研究センター 書評コンクールのお知らせ

センターではこの夏、構成員の皆様の書評を募集します。集まった書評はブログにて公開し、「紹介された本を読みたくなった書評」に11票ずつ投票(メール受付)を行います。皆様の応募を心よりお待ちしております。

書評コンクール スケジュール

731日(水) 書評の募集開始
821日(水) 書評の応募締め切り
822日(木) 書評の発表・投票開始
920日(金) 優秀作品と全執筆者の発表

 応募された書評は、まず、名前を伏せて822に公開します。投票は、誰が書いたか分からない状態で、書評のみを読んで行います。書評には到着順の番号を振りますので、投票ではその番号をメールに書いてください。投票結果と同時に、920、執筆者名(筆名可)と身分(学生/一般/教員/その他)を公開します。お楽しみに!

書評の募集要項
  応募資格:白百合女子大学児童文化研究センターの構成員であること。
  書評の分量:8001200
  応募方法:テキストをWordファイルで作成し、メールに添付してお送りください。
メール送り先  jido-bun@shirayuri.ac.jp

  メール本文には次のことを記載してください。
1.      書評の執筆者氏名(ペンネームでの公開をご希望の場合は併記してください)
2.      書評の執筆者の身分( 学生/一般/教員/その他 のなかからひとつ選んで記載)
3.      取り上げる本の書誌事項(本のタイトル・著者名・訳者名・出版社・出版年など)

  応募された書評は、原則として、そのままコピー&ペーストしてブログに掲載します。誤字・脱字にご注意ください。

投票について
  投票資格:白百合女子大学児童文化研究センターの構成員であること。
  「紹介された本を読みたくなったかどうか」を主な審査基準としてお選びください。
  投票方法:メールに書評番号を記入して送信してください。

       メール送り先 jido-bun@shirayuri.ac.jp

  書評の募集期間中も、通常の投稿を受け付けております。ただし、センター夏期閉室期間中、通常の投稿の更新日は821日・22日となりますので、ご了承ください。
  白百合女子大学児童文化研究センター構成員であれば、どなたでもご参加いただけます。
  優秀作品に選ばれた方には、賞状と賞品を差し上げます。選に漏れた方にも、ささやかな記念品を進呈いたします。

2019年7月18日木曜日

創作(散文詩)

星たち

あかるく透き通った海の底に、生き物たちは住んでいました。四本の短いつのを持ち、からだじゅうを硬い殻に覆われ、砂粒とほとんど見分けがつかないくらいに小さな生き物でした。
 彼らはどこからか生まれてきては、海の底の砂地についたり離れたりしながら、水のなかを漂いました。波の動きにつれ、行きつ戻りつを繰り返しているうちに、やがて命が尽きると、砂の上に降りていきました。砂に混じって少しずつ溜っていく死骸を、海水を通り抜けて届く太陽の光が白く照らしました。

 彼らはほかの生き物を食べて命をつないでいました。食糧のなかには彼らより小さなものもいましたし、彼らよりはるかに大きなものもいましたが、ともかく彼らは、自分たち以外の生き物のからだに取り付き、取り付かれた生き物のからだは見る間に小さくなっていきました。彼らが食べこぼしたからだは砂とともに海の底に溜っていきました。
太陽の光はもゆらに揺れながら砂の上を照らしました。
 波が大きく水を揺らすと、海の底はふと浮き上がり、水の動きに従って少し揺れ、しばらくしてしずまりました。その上にまた、生き物たちの新しい死骸が溜っていくのでした。

 夜が近づき、あたりが暗くなるのとは入れ違いに、彼らのからだは光を放つようになりました。はじめのうちはうっすらとした光でしたが、闇が深まるにつれ彼らの放つ光ははっきりとしていきました。
 彼らは毎晩、砂のなかに潜りました。四本のつのを器用に動かし、あたうかぎりの深さまで、彼らは潜りました。
 彼らが砂に潜っている最中にも、ときおり、波が海の底をめくりました。するとどこからかやってきた大きな生き物が、その時を待ちうけていたというように、大きな口を開け、砂に混じって浮き上がってきた彼らのからだをひと呑みにしました。呑まれたものは、自分を呑んだ生き物の腹のなかで、命が終わるまで光りました。波に動かされることのない砂の奥深くまで潜ることのできたものは、そこでもやはり、光を放ちました。
海の底からは、夜じゅう、やわらかな白い光がたちのぼりました。




Les étoiles

    Des êtres vivants habitaient au fond de la mer claire. 
Ils avaient quatre petites cornes et un boulier dur partout sur leurs corps. Ils étaient si petits, qu’on ne pouvait pas les distinguer du sable. Ils étaient venus de quelque part: ils erraient dans l’eau. Presque toujours, ils étaient bercés par la vague: et quand leurs vies se terminaient, ils descendaient dans les fonds sablonneux de la mer. Leurs cadavres s’amoncelaient sur les sables. La lumière du soleil les rendaient blanc.

Ils étaient carnassiers. Parmi leurs aliments, il y avait des animaux beaucoup plus grand qu’eux. Ils s’agrippaient à la proie, le corps possédé se rapetissait en un instant. Des bribes s’échappaient des gueules de petits êtres, tombaient sur les sables.

Quand les vagues faisaient trembler l’eau, les sables se détachaient légèrement du fond , se balançaient avec le courant et, un peu plus tard, se calmaient. De nouveaux cadavres y tombaient. La lumière du soleil projetait la forme des vagues sur le fond de la mer.

  Le jour tombait, ils émettaient de la lumière. La nuit n’était pas encore avancée et ils ne rejetaient que la lueur: mais plus l’obscurité s’épaississait, plus ils éclairaient clairement. Ils s’enfonçaient dans le sable tous les soirs. En utilisant habilement leurs quatre cornes, ils se cachaient dans les plus grandes profoneurs.

   Au soir, Une grosses houle retournant les sables et les êtres.
 Les grands animaux étaient dans l’attente de ce moment. Ils arrivaient de quelque part, ouvraient leurs gueules énormes, et avalaient les êtres microscopique d’une gorgée. Dans les ventres des animaux, les êtres éclairaient jusqu’à la fin de leurs vies. Les autres qui atteignaient les profondeurs de sable, éclairaient eux aussi.
  Dans le fond de la mer, le clair blanc s’élevaient doucement.

(児童文化研究センター助手 遠藤知恵子/ENDO, Chieko)

 フランス語版の文章の初出は、オンライン雑誌『Ah Bon?!Vol.320118月 https://issuu.com/journal-institut/docs/ahbonvol3)です。この雑誌はInstitut franco-japonais à Yokohamaの授業の成果物でもあります。ここに掲載させていただいた文章も、当時、講師だった先生方の添削・協力を経て発表されました。中には既に帰国された方もいらっしゃいますが、この場を借りて改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。



2019年7月15日月曜日

『なぞなぞ』 ~おばあさんは何者か?~

 
 私は不思議な話を探していました。しかし、図書館を探してみても、本屋さんを探してみても、ピンとくるものがありません。どうしたものかと頭を抱えながら、先週、大学内の森の中をぶらぶらと散歩をしていました。それは夕暮れの時のことでした。人はまばらで、ましてや森の中には人の気配すら感じられません。私はますます考え事にのめり込みました。あまりに没頭していたためか、突然私の左側の茂みから、烏の鳴き声が聞こえた時、思わずびっくりして立ち止まりました。それと同時にバサバサという羽音が左右どちらからも聞こえ、頭上の木の枝が揺らされる音が響きました。
 私はすっかり怯えてしまい、辺りをキョロキョロ見まわしました。そして目の前に見知らぬ女の人が佇んでいることに気づき、ハッと息を呑みました。先ほどまで誰もいなかったはずなのに。その人は7月だというのに、黒い厚手のコートを羽織っていました。真っ黒な長い髪、青白い肌。不自然なほどに大きな目。真っ黒なその目には光がありません。そして、下は黒いタイツに包まれた足を冬用のスノーブーツの中に突っ込んでいました。私はとっさに逃げようと思いましたが、体が上手く動きません。「あなた、不思議な話が読みたいんでしょう?」女の人はそういうと、動けない私にどんどんと近づいて来ました。そして私の目の前に来ると、一冊の本を差し出しました。「これ、読むといいわ」そう言って無理やり私の手にその本を押し付けると、くるりと背を向けて去っていきました。

 こんにちは〈SF・ファンタジー小説の研究と創作プロジェクト〉です。今回このプロジェクトでは、前回に引き続きClose Readingを行いました。そして扱った作品は、ウォルター・デ・ラ・メアという20世紀のイギリスの小説家・詩人のもので、『なぞなぞ』という名前の作品です。ストーリーを簡単にご説明いたしますと、おばあさまの家で暮らすことになった7人の子どもたちが、近づいてはいけないと言われていた木のひつの中へと次々に消えていき、最後には子ども全員が消えていなくなってしまう、と言うものです。
 この話を見ていくうちに、子どもたちを引き取ったおばあさんのどこか不気味な行動が注目されました。おばあさんは子どもたちに優しく、針箱や、ジャックナイフ、まりなどをそれぞれに贈ります。しかしよくよく考えてみると、まりはともかくとしても、針箱やジャックナイフなど、どこか危険なものであり、子どもに与えるのにあまりふさわしくないものではないでしょうか。そして子どもたちに「家のどこで遊んでもかまわないが、大きな予備の寝室にある、木のひつにだけは近づかないように」と強く言い含めます。ここまで読むと、7人の子どもたちや、行ってはいけない禁令の要素などが、昔話を彷彿させます。そう考えると上記のジャックナイフなども、孤立的な道具として、後で何かしらに使われるのではないでしょうか。しかし、残念ながら、それらの道具は子どもたちに手渡された後、一度も姿を見せることは無いのです。さらに、最初に1人の子が消えた後、おばあさんは「じゃあ、あの子はとうぶん、いったきりになるんだろうねえ」(デ・ラ・メア、166)、そして残された子どもたちに再度「絶対にあのひつに近寄るな」と言うのです。これらの謎めいたおばあさんの言動は不気味であり、恐ろしささえ感じられます。このことについて「作者が不穏なものを見せて読者を誘導し、あやしさを強化・強調していっている」という指摘がありました。確かに話を読み進めていくたび、不穏さや不気味さが増していっている気がします。また「おばあさんの不自然な様子を増していくことで、不思議な世界へと入りやすくしている」との指摘もありました。もう1人の子どもが消えると、おばあさんは「あの子たちはいつか、おまえたちのところに帰ってくるかもしれないよ」(デ・ラ・メア、167)、「あるいは、おまえたちがあの子たちのところへいくことになるのかもしれない」(デ・ラ・メア、167)などと、謎めいたことを言います。また、残された子どもたちに木のひつのところへと行かないように言うのですが、このときは言いつけを「できるだけ守るんですよ」(デ・ラ・メア、167)と言い、前よりも強制力が低いニュアンスで子どもたちに言いつけています。
 このおばあさんは意図的に子どもたちを誘導しているのだ、とする意見や、おばあさんは彼らがどうなったかは知っているが誘導しているわけではない、という意見、または安房直子さんの話に似たような人さらいの話があったことを思い出し、それが木の精であったことから、このおばあさんは木の精ではないだろうか、という意見もありました。
 このおばあさんは何者なのか、子どもたちはどうなってしまったのか。物語が進んでいくうちに謎はどんどん増えていきます。それが最後には明かされるだろうという期待を持ちながら、意見を交わしていきましたが…結局子どもたちは全員消え、おばあさんが何者か明かされることも、子どもたちがどこへ消えたのかも明かされることはなく、この物語は幕を閉じるのでした。
 この結末は謎が謎のまま終わってしまい、あとは読者が考えるというようなオープンエンドの形式をとっています。すっきりしない終わり方に、「これは話になっていない」と言う意見も出ました。また、「ファンタジーは謎を解いた形で終わらせるか、謎を謎のままにしておくかは作者によりけりである」という意見がありました。ちなみにメンバーの中では謎をすっきり解いてしまう終わり方の方が良いとする方の方が多かったです。しかし、私は何とも言えない不気味で不思議な気分を味わえますので、こういった謎が多く残る物語も好きです。皆さんはどちらの方がお好みでしょうか。

 私は謎の女の人に手渡された本の1編をClose Readingに用いました。そしてこの本が大学図書館のものであることを、本についているバーコードで確認しました。あの人が一体どこの誰なのか。私には皆目見当がつきません。しかし図書館のものである以上、返さなくてはなりません。しかし、この本は直接私が借りたものではない。借りたものを手渡されたのです。これは図書館の利用上ルール違反です。あの女の人が見つかれば、すぐに手渡すつもりでしたが、私にはその人をどうすれば探し出せるのかわかりませんでした。 
 仕方なく、私は図書館へと向かい、ドキドキしながら本を差し出しました。問いただされたら、しっかりと事情を説明するつもりだったのです。しかし、意外にも受付の人は普通に応対し、返却処理を施そうとしました。私はびっくりして思わず、受付の人を呼び止め、事情を焦って伝えました。「え?いや、そんなはずは…」受付の女性は驚いたように私とパソコンの画面のデータを見比べていました。「ここにはちゃんとデータが残っていますよ」そう言って、その画面を見るように私を促したのです。
 果たしてそこにはしっかりとその本の貸し出し記録が残されていました。学生証には写真がついていますので、仮にあの女の人が私の学生証を勝手に使って借りようとしても、止められていたことでしょう。それにあの時が初対面でしたのに、どうやって私の学生証を奪えるのでしょうか。本の裏についていた返却日時から逆算すると、その1ヵ月前に借りていたということになります。そうすると、どう考えても、私があの女の人に出会うずっと前に借りられていたことになるのです。
「あの…」受付の女性は、明らかに不審そうに私を見やりました。何か胡散臭いものを見るような眼差しです。「あ、あの…勘違いでした……私が、借りていました。すみません…ちょっとぼーっとしていて…」私はそう言うしかありませんでした。
 あの女の人は何者だったのか。どうしてあの本を私に渡してくれたのか。幽霊だったのか、幻だったのか…今でも私には分かりません。そしてあれ以来、その女の人を見かけることはありませんでした。

           <SF・ファンタジー小説の研究と創作プロジェクト>のA

参考文献
デ・ラ・メア、ウォルター「なぞなぞ」、『デ・ラ・メア物語集2』、マクワガ葉子訳(大日本図書株式会社、1997)、p163-170

2019年7月12日金曜日

こんなところに巌谷小波


雑誌『みづゑ』は、1905(明治38)年に水彩画家の大下藤次郎(1870-1911)によって創刊された、月刊の美術専門誌である。
水彩画初心者のために、絵の具や紙の選び方から懇切丁寧に手ほどきをしてくれる雑誌で、風景写生の友として、いつも持ち歩きたくなるような、小ぶりのサイズが可愛らしい。毎号の口絵は葉書くらい(現在の官製はがきよりやや小さめ)。狭い部屋にさりげなく飾れそうだ。また、写生旅行にまつわるエッセイは、時にはユーモアをこめて綴られ、紀行文としても読めるところが面白い。調べ物の目的を忘れ、つい、図書館の閉館直前まで読み耽ってしまう雑誌なのだ。

この雑誌の創刊号によれば、編集人である大下藤次郎は、毎月第四日曜日午後一時から、小石川の自宅で「絵葉書競技会」を開いていた。課題に応じた作品を出品して意匠や技術を競うほか、課題外の絵葉書は出品数に応じて出品者同士で交換していたようだ(『みづゑ』創刊号、19057月の「絵葉書競技会規定」より)。1900(明治33)年に私製葉書の発行が許可されてから5年。雑誌付録の絵葉書も含め、絵葉書収集熱が高まっていた頃のことである。学び、描く。手に入れて楽しむ。交流する。なんだかすごく楽しそうな雑誌だ。

ところで、同じく創刊号の「絵ハガキ競技会記事」(16ページ)に、次のようなことが書かれている。

客員巌谷小波氏の「定齊」は投票済みて後着せしが、意匠として奇抜のものなりき。

 こんなところに巌谷小波が。客員だったのか。しかも、「意匠として奇抜」などと評されている。これは気になる。

この会について、巌谷小波は何か日記に書いているだろうか。
そんなわけで、この日は早めにセンターに戻り、『児童文化研究センター 研究論文集22』の寄稿「巌谷小波日記 翻刻と注釈」を開いてみた。「画葉書」という気になる単語がちらほら見られる。これは、『みづゑ』関連のものなのだろうか。

…だが残念ながら、最新号の小波日記は「明治三十八年(一月~四月)」のものだった。『みづゑ』で紹介された絵葉書競技会は521日。巌谷小波はこの日の競技会のことを、日記に書いているのだろうか。

『みづゑ』で紹介されている、明治38521日に開催した競技会は12回目の会だという。『研究論文集23』発行まであと7ヵ月半ほどある。それまでに、バックナンバーに「絵葉書競技会」関連の記載がなかったかどうか、見直しておこう。

熊沢健児(ぬいぐるみ・名誉研究員)

※旧漢字は新漢字に置き換えて書いています。 

参考URL http://mizue.bookarchive.jp/index.html 
(東京文化財研究所所蔵資料アーカイブズ みづゑ)

この記事を書くにあたって、オンライン資料である「東京文化財研究所所蔵資料アーカイブズ みづゑ」も参考にした。東京文化財研究所と国立情報学研究所の共同研究によって構築されたアーカイブで、創刊号から90号までを公開している。現物を閲覧するときは古くなったページが「パリッ」と音を立てるたびに心臓が止まりそうになるものだが、オンラインではその心配はない。忙しくて図書館に行けないときや、安らかに読みたいときには、このアーカイブを使ってみたいと思っている。
 

2019年7月11日木曜日

猫村たたみの三文庫(非)公式ガイド


猫村たたみの三文庫(非)公式ガイド (1)三文庫の蔵書を検索してみよう

 センター構成員の皆さま、ご機嫌いかがかにゃ?
 私はセンター三文庫の守り猫、猫村たたみと申しますにゃ。
 ご覧のとおり、尻尾が二股に分かれた猫またにゃよ。

 普段は妖怪トンネルを通ってあてもない時間旅行をしているのにゃけど、
 今日は、センター構成員の皆さまに一言ご挨拶をと思い、
このセンターブログまではるばるやってきましたのにゃ。

皆さま、よろしくお願いしますにゃ。

ところで、さっき、センターで素敵な本を見つけたのにゃ。

『北欧の挿絵とおとぎ話の世界』
解説・監修 海野 弘 パイ インターナショナル 2015

北欧の神話とおとぎ話の世界を19世紀末のアールヌーボーの美意識が見出し
時には絢爛豪華に、時には可憐に描き出すのにゃ。

大ボリュームの図版を見ていると、目が洗われるようにゃ~。ふにゃぁ。。

それでだにゃ、この本に紹介される図版には、
白百合女子大学の図書館と、センターの蔵書が含まれているんにゃけど、
皆さま、ご存知かにゃ~?

『北欧の挿絵とおとぎ話の世界』掲載の
児童文化研究センター蔵書

『おやゆび姫』
グスタフ・テングレン画、ハンス・クリスチャン・アンデルセン著、Golden Press, Ind., New York1953

『アーサー王と円卓の騎士』
グスタフ・テングレン画、エマ・ゲルダーズ=スターン/バーバラ・リンゼイ著、Golden Press, Ind., New York1962

『白雪と紅バラ』
グスタフ・テングレン画、Golden Press, Ind., New York1957

ふにゃ~、3冊もあるんだにゃ~。

どれどれ、にゃむにゃむ…3冊とも、テングレンという画家が絵を描いている本だにゃ。
 綺麗な絵だにゃ。可愛いのにゃ。もっと見てみたいのにゃ。

 センターの蔵書なら、実物を手に取って見ることができるにゃよ。
 まずは、三文庫検索を使って、所蔵場所(※)や資料IDを調べるにゃ。

 三文庫の検索は、図書館のOPACでの検索とはちょいとした違いがあるのにゃ。
今日はそいつをお伝えしておこうかにゃ。

三文庫の検索は、「白百合女子大学学術リソース」の
「児童文化研究センター文庫」で行うのにゃ。

URLはこれにゃ。
皆さまもご一緒に、検索してみて欲しいにゃ。


博士論文検索・児童文化研究センター文庫検索・大学紀要等検索の三種類があって、
それぞれクリックして、博士論文とセンター文庫と大学紀要の3種類で絞り込めるにゃ。

ま、細かいことは気にせずキーワードを入れるにゃ。
とりあえず画家の名前かにゃ~。カタカタ…(入力中)

gustaf tenggren

クリックにゃ!

お~、18件もヒットしたにゃ。
1件は金平文庫。残り17件は光吉文庫にゃ。

さて、ここで注意なのが、人の名前の表記にゃ。
三文庫は研究者や大学院生など、専門家や専門家の卵による利用を想定しているにゃ。
図書館のOPACではカタカナ表記で入力しても洋書がヒットすることはあるのにゃけど、
三文庫は、カタカナ表記では洋書がヒットしないのにゃ。

三文庫検索で洋書を検索するときは、正確な外国語の綴りを入力してほしいにゃよ。

そして、もうひとつ。
外国人の名前に多い、G.Tenggrenのような、名前を省略した表記。
念のため、苗字のtenggrenだけで検索してみようかにゃ。

tenggren

カタカタ…(入力中)…。で…クリックにゃ!

にゃにゃ、にゃんと!! 

23件もヒットしたにゃ。
やっぱり、苗字だけの検索も試みたほうが、取りこぼしがなくて安心だにゃ~。

ヒットした23件の中から、最初の本で見た『アーサー王と円卓の騎士』の書誌情報を調べてみるにゃ。

まずは一覧表。ふむふむ…これは、光吉文庫の本だにゃ。
原題は、King Arthur and the knights of the round table。これだにゃ。
えい! クリックにゃ!

原題をクリックすると、「論文情報」として本の書誌詳細が出てくるにゃ。

「論文情報」の「タイトル」という欄の下に、
「児文研センターID」という欄があるにゃよ。

King Arthur and the knights of the round tableの場合は、「M10849」にゃね。
ここに書かれたIDと同じ「M10849」の印字されたシールを探せば、
お目当ての本にたどり着くにゃよ。
 光吉文庫の本にゃから、配架場所は本館4階児童文化研究室にゃね。

それでは、児童文化研究センターに行ってきますにゃ(※※)。
皆さま、ごきげんようにゃ~。


※児童文化研究センターの三文庫は、富田文庫・金平文庫・光吉文庫。
富田文庫・金平文庫はセンターを入って右奥。
  光吉文庫は本館4階の児童文化研究室にあるんだにゃ。

※※三文庫の蔵書はどれも貴重な資料にゃよ。
文庫スペースに立ち入るには、児童文化研究センターに行って、
下記のとおりの利用受付が必要にゃ。


児童文化研究センターの開室時間は9:0017:00にゃ。
時間に余裕を持って来室することと、
   事前に資料のIDを調べておくことが三文庫利用のポイントだにゃ。

分からないことは、センターの助手さんに聞いてみるといいにゃ!
  
名前 猫村たたみ

三文庫の守り猫(猫また)。三文庫の利用方法を優しくガイドする。
趣味は時間旅行。妖怪トンネルを使い、時空を超えて旅をするのが何よりの楽しみである。
祖先は歌川国芳の「荷宝蔵壁のむだ書」でセンターを務めた猫また様。