2023年5月31日水曜日

ミニ展示予告「本について話そう」―「戦争と平和について考える」をテーマに―

 6月から7月にかけて、「本について話そう」というタイトルのもと、センター蔵書(通称Z本)のリレー展示を行います。児童文化研究センター設立から31年が経ち、内外からのご寄贈によって構成されるセンター蔵書は、かなりの冊数になります。そろそろ、テーマごとの連続展示も可能なのではないかと考え、この展示を企画しました。場所はセンター入り口です。
 リレー展示「本について話そう」第Ⅰ期のテーマは、「戦争と平和について考える」です。深刻なテーマを扱った展示にはなりますが、1冊1冊の本がもつ魅力を大切にして、全8回のリレー展示を行おうと考えています。皆様、どうぞお付き合いください。

リレー展示概要 PDFファイルはこちら

2023年5月26日金曜日

第6回書評コンクール 応募作品を公開します


 第6回書評コンクールの応募作品を公開いたします。
 今回は6本のご応募がありました。ご応募、ありがとうございます。

【書評番号1】
アフィニティ・コナー著、野口百合子訳『パールとスターシャ』東京創元社、2018

【書評番号2
丸山宗利総監修『学研の図鑑LIVE 昆虫 新版』、学研プラス、2022

【書評番号3】
『クマのプーさん展公式図録 百町森のうた』E. H. シェパード [画] 、安達まみ監修、ブルーシープ、2022年 

【書評番号4】
しおたにまみこ『いちじくのはなし』ブロンズ新社、2023年

【書評番号5】
小林エリカ『光の子ども』第1部、全3巻、リトルモア、2013年/2016年/2019年

【書評番号6
フリードマン、ラッセル『ちいさな労働者 写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち』千葉茂樹訳、あすなろ書房、1996


 優秀作品は投票で決定いたします。

 投票方法:GoogleForms 

 投票できる人:児童文化研究センター構成員と本学学生

 投票締め切り:2023年6月15日(木)

 結果発表:6月16日(金)

 投票は書評の執筆者名を伏せた状態で行い、結果発表のときに各書評の執筆者を発表いたします。

 ぜひご参加ください!

【書評番号1】 アフィニティ・コナー著、野口百合子訳『パールとスターシャ』東京創元社、2018年


 家畜運搬車の扉が開く。中にはやせ細った老人と女性、そして背丈も顔立ちもそっくりな二人の少女。警備兵が居丈高に祖父に質問し、母と娘たちは震えている。

 一家のすぐそばで、三つ子の少年たちが白衣の男に安全を請け合われ、他の人々とは別の場所へ進まされる。怯えていた母親の目に光が戻り、兵士に詰め寄るように尋ねる。

「ここでは−−双子なのはいいことなんですか?」


 家族が連れて来られたのはアウシュビッツ絶滅収容所。双子や三つ子を選別していた白衣の男はヨーゼフ・メンゲレ。ナチスで非道な人体実験を繰り返し、戦後も逃亡して罪を償うことのなかった人物である。

 主人公の双子の姉妹、12歳のパールとスターシャはメンゲレの手に引き渡され、「動物園」と呼ばれる施設へ入れられる。実験材料として保護されるとはいえ、その環境は悲惨だ。衛生面は酷く、食事も十分ではない。息を引き取る者がいれば、周囲は悲しむのではなく我先にと身ぐるみをはがしにかかる。

 物語は姉妹のそれぞれの視点から交互に語られる。過酷な状況だが、二人の語りは決して暗いものではない。互いへの愛情。収容者との間に芽生える絆。人が人として扱われない環境でも、人間性までは奪えない。

 特に妹のスターシャは想像力が豊かで、現実に空想を重ねることで自分を保つすべを知っている。人体の標本を見たショックを蝶の標本を連想することで和らげたり、ジャッカルになりきって苦境を凌いだり、スターシャの想像はしばしば動物と結びつく。これらの発想の源になっているのは全て、生物学者だった祖父から教わった知識だ。スターシャにとって空想は離れ離れになった家族との繋がりを確認する手段でもある。

 一方で、現実主義のパールは空想に逃げることができず、残酷な状況を直視し、疲弊していく。姉を自分の「最良の部分」と考え、全く同じ存在でありたいと願うスターシャの思いとは裏腹に、パールは収容所を生き延びられる可能性が高いのは妹だと判断し、彼女を生かそうと画策するようになる。

 そしてついに、姉妹が離れ離れになる日が来る。引き離された二人はどんな運命を辿るのか。つらく長い道のりになるが、希望ある結末が待っているので、ぜひ実際に読んでみてほしい。

 なお、パールとスターシャは架空の人物だが、物語には実在の人物がモデルとなったキャラクターも多数登場する。特に、多くの妊婦を苦渋の選択によって助けたユダヤ人女医のジゼラ・パールがモデルとおぼしきミリ医師の悲嘆は、我が子を奪われた全てのユダヤ人女性の嘆きが凝縮されているかのようで胸が引き裂かれる。

 この本を読み終えたときに覚えたのは、なんて美しい物語だろうという感動だ。被害者を美化しているわけではなく、描かれているのはおぞましい所業ばかり。それでも、パールとスターシャの目を通して見える世界は光に満ちている。人間の「最良の部分」を信じようと思わせてくれる力強い作品である。



***第6回書評コンクール 投票方法***

センター構成員の方と本学学生の方は、投票にご参加いただけます。

投票は、Google Formsでお願いいたします。

皆様のご参加を、心よりお待ちしております。


【書評番号2】丸山宗利総監修『学研の図鑑LIVE 昆虫 新版』、学研プラス、2022年


 読んでいてこれほど胸の熱くなる、図鑑の監修者前書きもそうそうあるまい。昆虫への思いはもちろん、図鑑というものに対する思いがひしひしと伝わってくる。優れた図鑑は子どもたちを夢中にさせ、ボロボロになるまで毎日くり返し読まれるものなのだ。本書は明確にそれを目指している。


 出版界において、学習図鑑は長らく小学館と学研の二強体制が続いていた。だが、2000年から小・中学校と高等学校で「総合的な学習の時間」がはじまると、新しい様相を見せるようになる。最新情報や写真図版の収録に力を入れた「小学館の図鑑NEO」や「ポプラディア大図鑑WONDA」、家庭の本棚に収まりやすいサイズで動画のDVDを付録とした「講談社の動く図鑑MOVE」など、出版各社が工夫を凝らした新シリーズを展開する中、学研はどうにも出遅れている感じが否めなかった。


 しかし、本書はあまたある昆虫図鑑の中で群を抜いてすばらしい。収録されている昆虫などの種類が他社の学習図鑑よりも圧倒的に多いだけでなく、生きたものの写真だけを使っているところが、これまでの昆虫図鑑と異なっている。


「昆虫がいちばんきれいに見え、みなさんが手にとってみたときの印象で調べられるよう、生きたものだけをのせることにしました」


 さらっと書いてあるが、2,800種以上を収録している昆虫図鑑でそれを実現するには、どれほどの時間と労力がかかったことだろうか。死後の標本の写真で済ませれば、もっと楽であったろうに。約50名もの研究者たち(助手や学生を含めると、何百人にもなるだろう)が手分けして虫を探し、写真を撮影する日々。さらに友人・知人に広く声をかけ、情報や生体などを提供してもらって、この図鑑はできあがっているのだ。


 例えば、「カマキリのなかま」のページを見てみる。どのページのカマキリも、同じ角度で、同じポーズをとっている。きっと、カマキリの生態が一番よくわかり、一番美しく見える角度とポーズなのだろう。その瞬間になるまで、撮影チームはカメラを構え、固唾をのんで見守っていたのだ。逃げられない工夫も必要だっただろう。相手は生きているのだから。


 自分は昆虫にはさほど興味のない人間だが、この図鑑は面白い。何気なく開いたページを眺めているだけで、「オオセンチコガネは生息する地域によって色がこんなに違うのか。嘘みたいに違うな」など、思いもよらなかった知識が入ってきて、「昆虫ってすごいな」「生き物ってすごいな」「もっと知りたいな」という気持ちにさせられるのだ。昆虫好きな子どもなら、貪るように読むだろう。できれば本書を子どもの頃の自分に見せてやりたいという総監修者の言葉には、納得と尊敬と感動しかない。



***第6回書評コンクール 投票方法***

センター構成員の方と本学学生の方は、投票にご参加いただけます。

投票は、Google Formsでお願いいたします。

皆様のご参加を、心よりお待ちしております。


【書評番号3】『クマのプーさん展公式図録 百町森のうた』E. H. シェパード [画] 、安達まみ監修、ブルーシープ、2022年


 また、会えたね。

 子どものころ『クマのプーさん』を読みふけった人も、そうでない人も、ついそう口に出してしまうような空間が、2022年の夏、立川に広がっていた。赤い布張りの表紙が金文字で飾られ、プーとなかまたちが慰労会をしている場面が描かれた、豪華な装丁のこの本は、2022年7月16日から10月2日まで東京・立川のPLAY! MUSEUMで、次いで10月8日から11月27日まで名古屋市美術館で開催された「クマのプーさん」展の公式図録である。

 私は立川のほうにしか足を運んでいないのだが、PLAY! MUSEUMでの展覧会は、3部構成になっていた。まず、「Pooh A to Z」と題された、AからZまで順にプーのぬいぐるみや、クリストファー・ロビンの防水マントや長ぐつといったちょっとした展示とともにプーとなかまたちに関する紹介がなされたものがあり、次に、ぐるりと一周するスクリーンに物語の舞台であるアッシュダウンの森の景色が映されたインスタレーションを見ることができる。そしてそれからやっと、まるで昨日描かれたかのように鮮やかなシェパードの原画と向き合うのだ。

 本書は、本の性質上シェパードの絵が中心となるわけだが、展覧会での「A to Z」の展示は、展覧会を監修した安達まみによる「プー辞典」として引き継がれている。「もっとプーが好きになる50のお話」と題されたそれは、展覧会と同じくAから、ただし展覧会よりも分量を増やして、AはAlice、ミルンの詩「バッキンガムきゅうでん」に登場する乳母の名前、Zはzoo、ウィニー=ザ=プーの由来になった本物のクマの話、といったように丁寧に綴られている。終盤にあるたった15ページほどのもので、一見おまけのように見えなくもないのだが、これらのことを知ってからお話と絵に向き合うと、また違った景色が見えてくる。本当に辞典として、気になる項目を探して読んでもおもしろい。

 昨年展覧会には足を運べなかったという人も、この夏は本書を通して、プーとなかまたちに会いに、百町森に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。



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センター構成員の方と本学学生の方は、投票にご参加いただけます。

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皆様のご参加を、心よりお待ちしております。


【書評番号4】しおたにまみこ『いちじくのはなし』ブロンズ新社、2023年


 皆さまは、「おはなし会」はお好きかにゃ? 私はおはなし会を開くのも、聴きに行くのも、どっちも同じくらい大好きですにゃ。

 しおたにまみこさんの『いちじくのはなし』では、くだものかごのいちじくさんがおはなし会を開催するのにゃよ。いちじくさんのお話を、台所のみんなが聴きにいくのにゃ。三夜連続のスペクタクル、楽しみにゃね~。前作『たまごのはなし』の主役、たまごさんも、お友達のマシュマロさんと一緒にこのおはなし会に行くのにゃって。

 夕方、果物かごの前に蝋燭を灯したら、大冒険の、はじまりはじまり〜! キッチンのみんなの前で、いちじくさんが話す冒険譚、もちろん主人公はいちじくさんなのにゃ。いちじくさんは自分の大活躍を自信たっぷりに話すのにゃけど、さてさて、これってほんとのお話かにゃ?

 たまごさんやいちじくさんたちが暮らしている台所は、タイルに汚れがはねていたり、小さくひびが入っていたり、台にはちょっぴりごみが散らばっていたりして、生活感があるのにゃ。ぴっかぴかに綺麗で新しそうにゃった前作から、だいぶ時間が経ったように見えるのにゃ。たまごさんもマシュマロさんも、台所のみんなとすっかり打ち解けてお友達になっているみたいなのにゃよ。本に書かれた物語は終わっても、物語の中の時間は流れ続けているのかにゃ~?

 でも、変わっていないこともあって、第一作でたまごさんにかじられたマシュマロさんの頭、歯の跡がそのまま残っているのにゃよ。細部まで丁寧に描きこんであるから、一通り物語を辿り終えたら、ぜひ再読してにゃ。じっくりと絵だけ観察してみたり、前作と読み比べて違いを探したり、遊んで欲しいのにゃよ(私、家の間取りを想像してお絵描きをしたのにゃ!)。

 絵が繊細で細かいぶん、集団での読み聞かせに向いているとは言えないのにゃけど、二人か三人くらいでの読み聞かせにはおすすめにゃ。誰かに読んでもらうと、絵をじっくり見る余裕ができて楽しさ百倍にゃし、いちじくさんや台所の仲間たちになり切って読んであげるのも良い感じにゃ。

 ちなみにこの本、淡いいちじく色のジャケットを外すと、表紙見返しに船の舳先に立って望遠鏡を覗くいちじくがいるのにゃ。ということは、裏表紙の方は…にゃふ〜ん、教えてあげないのにゃ!



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【書評番号5】小林エリカ『光の子ども』第1部、全3巻、リトルモア、2013年/2016年/2019年


 1896年、日本では北海道から宮城にかけて大地震と津波が襲い(明治三陸地震津波)、ヨーロッパではヴィルヘルム・コンラート・レントゲンが発見したX線の存在に人々が夢中になった。それから115年後の日本に、このマンガの主人公、光が生まれる。東日本大震災と津波による福島第一原子力発電所の事故が起きた年に生まれた光に、母親は「ほんとうに、あなたは光みたいだったの」(第1巻、11ページ)と言う。光には「光」が見えた。

 「光」を帯びた雨が街に降り注ぐある日、光は猫のエルヴィンを追って1900年のパリに行き、マリ・キュリーとピエール・キュリーの娘、イレーヌと出会う。このときから、現在と過去、日本とヨーロッパを行き来して「光」を追う旅が始まる。

 12年前の震災を覚えている私たちは、光が見る「光」とはおそらく放射能のことだとすぐ気づくことができるのだが、物語のいわゆる設定に関する言及が極端に少ないため確かなことは言えない。この作品の作者が読者に示すものはおもに事柄の断片、歴史的事実に関する説明や図版、図表といったものであって、それらの資料の合間を縫うように、光と「光」の物語が進み、100年前を生きた実在の人々の物語が同時並行で進んでいく。それら、いくつもの物語を一冊の本の中に「まとめ上げよう」とする意思は、この作品からは感じ取れない…というより、「まとめてたまるか」という反骨精神すら、あるような気がする。複雑なことを一つの大きな物語に統合するような野蛮な真似はせず、十分に複雑であるように物語る。

 同じ時代に、異なる地域でどんなことが起きていたのか。その時代・その地域を生きた人々はどんな一生を送ったのか。世界を覆う大きな出来事である戦争や科学の進歩に、彼ら・彼女ら、一人一人、どんな意味を見出していたのか。1900年代初頭の人々は、存在を確認されたばかりの放射性物質が人類にもたらすかも知れない「進歩」に胸を躍らせ、放射能の危険性を理解している光はキュリーらの研究をなんとかして止めたいと願う。二つの願いは物語の中でぶつかり合う。

 物語の中で放射能を暗示する「光」にも、二面性がある。作者の小林は「光」に「過去の時間を伝えてくれる」(第1巻、12ページ)という能力を与えている。物語の登場人物を死に至らしめるかも知れない危険な「光」に、この物語のプロットを可能にする重要な役割を持たせているのだ。高村光太郎や吉本隆明、あるいは手塚治虫ならまだしも、21世紀の作家がこのような「光」のメタファーを用いて物語を書くとは。レントゲン博士やキュリー夫妻による研究は後続の研究者たちに引き継がれ、医療やエネルギー、そして軍事に「応用」された。その推移は私たちも知っている通りであるが、小林は既に知っていることを新鮮な物語にして語り起こしてくれる。第2部はどうなるのか、続きが気になる。



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【書評番号6】 フリードマン、ラッセル『ちいさな労働者 写真家ルイス・ハインの目がとらえた子どもたち』千葉茂樹訳、あすなろ書房、1996年


 豊富な写真図版が特徴である本書は、写真家ルイス・ハイン(Lewis Wickes Hine. 1874-1940)の生涯を、彼の代表的な仕事のうちのひとつ―働く子どもたちの姿を写し、児童労働の実態を告発した写真群―を中心に紹介する、ノンフィクション作品である。図版の1枚1枚が、見る者を見つめ返す力に満ちている。

 カメラマンとしてのハインの仕事は、いくつかの職業を経て師範学校と大学で学んだあと、ニューヨーク市立エチカル・カルチャー・スクールの教師として、地理と科学を教えていた頃に始まる。きっかけは、学長フランク・マニーに、学校の記録写真を撮影するよう説得されたことだった。学校行事を写したハインの写真が評判を呼ぶようになると、マニーは写真を教材として利用することに決め、移民局があるエリス島で移民の家族を撮影するようハインに指示する。ハインはそこでの200枚を超える写真撮影を通じ、撮影者としての心構えや撮影技術を身につけると、児童福祉連盟、全米消費者連盟、全米児童労働員会などの仕事を引き受け始める。そして教師を辞め、全米児童労働委員会の専属カメラマンとなる。

 ハインの撮影は、それまで隠されてきた児童労働の現実を白日のもとに晒し、当時のアメリカ全体に児童労働禁止の機運をもたらした。本書に収録された写真はどれも力強く、「ハイン式」とでも呼びたくなるような一定の調子を帯びている。本書によるとハインは被写体となる子どもたちの名前、年齢、労働時間、賃金、就学状況などを克明に記録したという。撮影者の意図を明確に押し出したイメージと正確無比なデータの組み合わせが当時のアメリカ人にもたらした衝撃は大きかったに違いない。また、ハインは児童労働についてのパンフレットやブックレットをデザインしたり、写真展を企画したりするにあたり、写真につける説明文も自分で書いていた。このときに用いた、写真と文章を組み合わせる表現方法を、彼は「フォトストーリー」と名付けたという。

 写真を文章と組み合わせて伝達する表現方法は汎用性が高く、分かりやすい説明を必要とするさまざまな場面で用いられている。もちろん児童書も例外ではなく、そうした表現を効果的に用いた読み物や写真絵本などを数多く見ることができる。

 膨大な取材データや、表現者の内部に構築された確かな手触りのある世界観を前提とする、写真と言葉による表現の最前線にいた人物としても、ハインは興味深い。本書は子どもの人権や労働問題などについて知りたい中学生・高校生に適しているだけでなく、児童書における写真の表現について学びたい大人の初学者にも示唆を与えてくれる。子どもの本について共に学ぶ仲間たちと、ぜひとも共有していたい1冊である。



***第6回書評コンクール 投票方法***

センター構成員の方と本学学生の方は、投票にご参加いただけます。

投票は、Google Formsでお願いいたします。

皆様のご参加を、心よりお待ちしております。


2023年5月19日金曜日

ミニ展示 5月19日~6月2日

 センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行っております。展示期間中も貸し出しをすることができます。どうぞお気軽にご利用ください。


展示中の図書

Kutze, Stepp'n on Wheat

Translated by David Karashima

Thames River Press 2014

Kuhtse, der Weizenstampfer: Roman

übersetzt von Thomas Jordi

Bebra Verlag 2013


いしいしんじ『麦ふみクーツェ』の英語版とドイツ語版です

2023年5月12日金曜日

ミニ展示 5月12日~19日

センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行っております。事典ですので貸し出しはしておりませんが、センターにお立ち寄りの際には、ぜひお手に取ってご覧ください。


展示中の図書

新版 オックスフォード

世界児童文学百科

The Oxford Companion to Childrens Literature

ダニエル・ハーン 編著

白井澄子 西村醇子 水間千恵 監訳

原書房 2023

 

本学の先生方や先輩方が多数参加されています!

ムナーリとレオーニ(31)

1948

 

 今回も、ムナーリとレオーニ、それぞれの年譜を読んでいこう。

 1948年、ムナーリは、春にニューヨークで個展を開催。船で輸送した「《役に立たない機械》などが破損し、ロメオ・トニネッリの事務所での小規模な展示」(p.345)になったとある。しかし、作品の破損という災難はあったけれど、3つの個展を開催し、5つのグループ展に参加。おもにミラノでコンスタントに作品発表を続けている。

 ムナーリの年譜をレオーニのそれと比べたとき特に印象的なのは、やはり芸術運動への参加だ。前回、1947年の年譜を読んだときにはあまり注目していなかったのだけれど、この年にミラノで開催された具体芸術の展覧会「抽象芸術・具体芸術」に、ムナーリも参加していた。この展覧会には、マックス・ビル(1908-1994。スイス生まれの画家・彫刻家・デザイナー)や、ジャン・アルプ(1887-1966。シュトラスブルク出身。画家・彫刻家・詩人)も出品していたそうだ。194812月には、ムナーリはアタナージオ・ソルダーティ(1896-1953)やジッロ・ドルフレス(1910-2018)らとともに、「MACMovimento Arte Concreta/具体芸術運動)」設立に加わっている。未来派の一員だったころ、宣言に署名したといったたぐいの記載をたまに目にしたけれど(例えば、1941年の「未来派原始宣言」第2版)、戦後も、ムナーリはグループでの芸術運動に参加していた。一方のレオーニの年譜には、1932年に未来派の作品展に参加したことが記されていたけれど、ムナーリのように芸術運動に参加したことを示す記述は、ほかに見当たらない。

 ところで、レオーニの1948年は節目の年になった。N.W.エイヤー(フィラデルフィアの大手広告代理店)を退社。勤め人としての生活に終止符を打った。

 

【書誌情報】

奥田亜希子編「ブルーノ・ムナーリ年譜」『ブルーノ・ムナーリ』求龍堂、2018年、pp.342-357

「レオ・レオーニ 年譜」『だれも知らないレオ・レオーニ』玄光社、2020年、pp.216-219 ※執筆担当者の表示なし


遠藤知恵子(センター助手)

2023年5月11日木曜日

小林将輝先生講演会 参加申し込み受付中 ※終了いたしました

 7月8日開催予定の小林将輝先生講演会のポスターを公開いたします。

 おかげさまで、無事終了いたしました。ご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。

 こちらの講演会は、児童文学にご興味のある方なら、お申し込みの上、どなたでもご参加いただけます。



児童文学研究を志す人だけでなく、こんな人たちにもおすすめです

😄児童書の翻訳に興味がある人
😄「美しい日本語ってなんだろう?」と思ったことのある人
😄白百合女子大学大学院(児童文学専攻)への進学を考えている人
😄進学はともかく、児童文学の世界にいちど触れてみたいと思っている人

皆様のご参加を、お待ちしております。