2023年5月26日金曜日

【書評番号4】しおたにまみこ『いちじくのはなし』ブロンズ新社、2023年


 皆さまは、「おはなし会」はお好きかにゃ? 私はおはなし会を開くのも、聴きに行くのも、どっちも同じくらい大好きですにゃ。

 しおたにまみこさんの『いちじくのはなし』では、くだものかごのいちじくさんがおはなし会を開催するのにゃよ。いちじくさんのお話を、台所のみんなが聴きにいくのにゃ。三夜連続のスペクタクル、楽しみにゃね~。前作『たまごのはなし』の主役、たまごさんも、お友達のマシュマロさんと一緒にこのおはなし会に行くのにゃって。

 夕方、果物かごの前に蝋燭を灯したら、大冒険の、はじまりはじまり〜! キッチンのみんなの前で、いちじくさんが話す冒険譚、もちろん主人公はいちじくさんなのにゃ。いちじくさんは自分の大活躍を自信たっぷりに話すのにゃけど、さてさて、これってほんとのお話かにゃ?

 たまごさんやいちじくさんたちが暮らしている台所は、タイルに汚れがはねていたり、小さくひびが入っていたり、台にはちょっぴりごみが散らばっていたりして、生活感があるのにゃ。ぴっかぴかに綺麗で新しそうにゃった前作から、だいぶ時間が経ったように見えるのにゃ。たまごさんもマシュマロさんも、台所のみんなとすっかり打ち解けてお友達になっているみたいなのにゃよ。本に書かれた物語は終わっても、物語の中の時間は流れ続けているのかにゃ~?

 でも、変わっていないこともあって、第一作でたまごさんにかじられたマシュマロさんの頭、歯の跡がそのまま残っているのにゃよ。細部まで丁寧に描きこんであるから、一通り物語を辿り終えたら、ぜひ再読してにゃ。じっくりと絵だけ観察してみたり、前作と読み比べて違いを探したり、遊んで欲しいのにゃよ(私、家の間取りを想像してお絵描きをしたのにゃ!)。

 絵が繊細で細かいぶん、集団での読み聞かせに向いているとは言えないのにゃけど、二人か三人くらいでの読み聞かせにはおすすめにゃ。誰かに読んでもらうと、絵をじっくり見る余裕ができて楽しさ百倍にゃし、いちじくさんや台所の仲間たちになり切って読んであげるのも良い感じにゃ。

 ちなみにこの本、淡いいちじく色のジャケットを外すと、表紙見返しに船の舳先に立って望遠鏡を覗くいちじくがいるのにゃ。ということは、裏表紙の方は…にゃふ〜ん、教えてあげないのにゃ!



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