2023年5月26日金曜日

【書評番号3】『クマのプーさん展公式図録 百町森のうた』E. H. シェパード [画] 、安達まみ監修、ブルーシープ、2022年


 また、会えたね。

 子どものころ『クマのプーさん』を読みふけった人も、そうでない人も、ついそう口に出してしまうような空間が、2022年の夏、立川に広がっていた。赤い布張りの表紙が金文字で飾られ、プーとなかまたちが慰労会をしている場面が描かれた、豪華な装丁のこの本は、2022年7月16日から10月2日まで東京・立川のPLAY! MUSEUMで、次いで10月8日から11月27日まで名古屋市美術館で開催された「クマのプーさん」展の公式図録である。

 私は立川のほうにしか足を運んでいないのだが、PLAY! MUSEUMでの展覧会は、3部構成になっていた。まず、「Pooh A to Z」と題された、AからZまで順にプーのぬいぐるみや、クリストファー・ロビンの防水マントや長ぐつといったちょっとした展示とともにプーとなかまたちに関する紹介がなされたものがあり、次に、ぐるりと一周するスクリーンに物語の舞台であるアッシュダウンの森の景色が映されたインスタレーションを見ることができる。そしてそれからやっと、まるで昨日描かれたかのように鮮やかなシェパードの原画と向き合うのだ。

 本書は、本の性質上シェパードの絵が中心となるわけだが、展覧会での「A to Z」の展示は、展覧会を監修した安達まみによる「プー辞典」として引き継がれている。「もっとプーが好きになる50のお話」と題されたそれは、展覧会と同じくAから、ただし展覧会よりも分量を増やして、AはAlice、ミルンの詩「バッキンガムきゅうでん」に登場する乳母の名前、Zはzoo、ウィニー=ザ=プーの由来になった本物のクマの話、といったように丁寧に綴られている。終盤にあるたった15ページほどのもので、一見おまけのように見えなくもないのだが、これらのことを知ってからお話と絵に向き合うと、また違った景色が見えてくる。本当に辞典として、気になる項目を探して読んでもおもしろい。

 昨年展覧会には足を運べなかったという人も、この夏は本書を通して、プーとなかまたちに会いに、百町森に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。



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