いつも一緒に遊んでいた大切な友達が重い病気になったら、子どもの受けるショックはいかばかりだろう。ライナス——お気に入りの毛布がないと安心できない、「ライナスの毛布」のあのライナス——は、友達のジャニスが白血病で入院してしまい、味わったことのない心の痛みを感じる。
ライナスの周りには、その痛みに寄り添ってくれる親友のチャーリー・ブラウンだけでなく、痛みをさらに強めるような子どもたちもいる。さわったら病気がうつると言ってくる姉のルーシーや、化学療法で髪が抜けたジャニスをからかういじめっ子、退院したジャニスが先生にえこひいきされていると陰口を叩くクラスメイトたち。そして、ジャニスが病気になってから、自分たちはいつもなにか放っておかれている感じがすると言う、ジャニスのきょうだいたち。
無理解による敵意にさらされるジャニスを、ライナスはいつもかばい、守る。
「ジャニスは、なにかわるいことをしたから、がんになったんじゃないよ。この作品は、スヌーピーが登場する漫画『ピーナッツ』の作者シュルツ氏の元に届いた、小児病院の看護師からの手紙がきっかけで生まれた。「がんとたたかっている幼い子どもたちのために、スヌーピーと仲間たちの力をかしてほしいのです」——その願いに応えてテレビアニメが作られ、次に作られたのが本作、絵本である。
アメリカでテレビアニメ版を観た日本人看護師たちが感激し、日本にいる小児がんの専門医に手紙で教え、絵本版を送ったことで、本作の日本語版が出版された。日本語への翻訳は、その小児科医が行っている。原書も日本語版も、小児がんとたたかう子どもたちを支えてきた医療従事者たちの働きかけで誕生したのだ。
日本語版ではわかりづらいが、原書では、原画の紙の凹凸による水彩の微妙な濃淡が、そのままくっきりと印刷されている。アニメのフィルムを使ってフィルムコミックにするのではなく、自ら描き下ろした絵で絵本に仕上げたところに、シュルツ氏の熱い思いが感じられる。漫画ではなく絵本の形で、彼は健康な子にも病気の子にも、広く届け、伝えたかったのだ。つらい思いをしている子の気持ちを想像し、わかろうとすることの大切さを。そして、重い病気であることにうしろめたさを感じる必要など、まるでないのだということを。
重いテーマの作品だが、どんなときも自由気ままにふるまうスヌーピーが、明るさと笑いをもたらしてくれている。