2024年7月5日金曜日

【書評番号3】『ねずみじょうど』瀬田貞二 再話 丸木位里 画 福音館書店 1967年

 「ねずみのじょうど ねこさえ いなけりゃ このよは ごくらく とんとん」(p.13)

 あねさんねずみたちが歌う、この歌をきいたときほどショックだったことはないのにゃよ! 私、この絵本に出てくるねずみさんたちが可愛くてとっても好きなのにゃ。そもそもねずみさんたちは私のお友達にゃ。食べたりなんか、しないのにゃよ~!

 貧乏なおじいさんが、おばあさんにこしらえてもらったそばもち(そば粉を練って作ったお餅にゃ)を、地面の穴に落としてしまうことから事件は始まるのにゃけど、その穴はねずみさんたちの巣穴だったのにゃ! おじいさんが落としてくれた、おばあさんの美味しいそばもちのお礼に、ねずみさんがおじいさんを巣穴にご招待するのにゃよ。めくるめくアンダーグラウンド(土の下の巣穴にゃからね)の世界へようこそ!なのにゃ。

 お土産までもらって、おじいさんは嬉しい気持ちでおばあさんのところへ帰るのにゃよ。すると、隣に住んでいるめくされじいさんがやってきて…にゃっ、にゃにゃっ! いけないいけない。これ以上言うとネタバレになっちゃうのにゃ。昔話にゃから、大人の皆さまはなんとな~く想像がつくと思うのにゃけど、最後のオチは言わずに、お楽しみに取っておくのにゃ!

 再話は安定の瀬田貞二さんにゃ。絵を描いたのは丸木位里さんにゃよ。この絵本が出版された頃は、丸木さんは俊さん(赤松俊子さん)と共同制作で〈原爆の図〉のシリーズを描き続けていたのにゃ。日本画の手法をマスターしていた丸木さん。若い頃は、ヨーロッパ(アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」にゃ!)で起こった前衛芸術運動、シュルレアリスムに学んで実験的な方法をたくさん試していたのにゃって。『ねずみじょうど』では、大胆な滲みにゃとか、かすれにゃとかいったものを巧みに使って、ちょっと不気味な暗がりの中に息づいているねずみさんたちのおうちを表現しているのにゃ。ねずみさんたちの浄土(極楽)って、薄暗いのにゃね~。