2025年4月10日木曜日

猫村たたみの三文庫(非)公式ガイド

 この記事は、白百合女子大学児童文化研究センターオリジナルキャラクター「猫村たたみ(ねこむら・たたみ)」によるものです。猫村は、児童文化研究センターの貴重書庫「三文庫」を図書館司書として守り、その魅力を広く伝えるという職務遂行上の理由から、語尾に「にゃ」をつけたいわゆる「キャラ語」を用います。本ブログ記事をお読みくださる皆様におかれましては、キャラクターの性質をご理解の上、猫村たたみの世界観をお楽しみくださいますよう、お願い申し上げます。
猫村たたみ
 皆さま、ご機嫌いかがかにゃ?
 三文庫の守り猫、猫村たたみですにゃ。いよいよ新学期が始まったのにゃね。新学期の大学は賑やかで、私もなんだか楽しいのにゃ~。
 私がお守りする「三文庫」は、白百合女子大学児童文化研究センターの貴重書庫なのにゃよ。三文庫は、「金平文庫(かねひらぶんこ)」「冨田文庫(とみたぶんこ)」「光吉文庫(みつよしぶんこ)」という三つの文庫で構成されていて、それぞれにユニークな来歴と蔵書をもっているのにゃ。世界中でここにしかない資料もあるのにゃよ!
 
 ところで、皆さまはもう、2025年度の目標を立てられましたかにゃ? 私の2025年度の目標は「原点回帰」ですにゃ! 今年度は本についての本をたくさん読んで、司書としての知識に磨きをかけるのにゃ。
 この前、図書館で素敵な本を見つけたのにゃ。タイトルは『本づくりの匠たち』。本づくりに関わるさまざまな「匠」の技を、デザイナーの名久井直子さんが見学して、本を作ったり修理したりする、いろんな名人のお話を聴くのにゃよ。印刷や製本や函作りなどの現場で名人がどんなふうにお仕事しているかを知ることができる、興味深い本なのにゃ。
 たとえば、「小口印刷」。小口(こぐち)って、本の「背(せ)」以外の、紙の切り口が見えるところにゃよ。上の小口を「天」、下の小口を「地」とも呼ぶから、背の反対側の部分を特に指して「小口」と言うことが多いにゃね。辞書などの小口に、「あかさたなはまやらわ」って書いてあるの、あれ、便利にゃね~。ああいうのが小口印刷。小口印刷をする現場の人たちや、そこで使われている機械などを写真で見ながら、名久井さんのチャーミングかつ本づくりの勘所を踏まえた発言や、匠の皆さまとのやり取りを読むのがとっても楽しいのにゃ!
 本を書いた人や装丁をした人、編集した人や出版社などの名前は奥付に書いてあるけれど、インクの色を調節した人や製本をした人、特殊な印刷や加工をした人たちは「縁の下の力持ち」にゃからね~。『本づくりの匠たち』では、滅多に見られない、貴重なお仕事風景を覗き見できちゃうのにゃ!
 そんなわけで、私、この本をとても面白く読み進めていたのにゃ。すると、にゃ…にゃんと! 冨田文庫の資料がこの本のなかの写真に写っていたのにゃよ! 東京修復保存センター(TRCC)さんへの取材なのにゃ!
 この本の83ページで、TRCCの修復現場を見学する名久井さんが「あっ! かわいい表紙がいっぱい!」と声を挙げ、ペーパー・コンサバター(歴史文書保存修復家)の安田智子さんが「白百合女子大学から預かったものですね。明治・大正から昭和にかけての児童書や雑誌です」と応じるのにゃ。そして、89ページの写真には、『小鹿のはなし』の表紙が! これ、冨田文庫の資料にゃよ。
 そうそう、思い出したのにゃ! 文庫の整備をするときには、TRCCさんにたくさんの資料を修復していただいたのにゃよ。錆びてしまったステープラー(ホチキス)の針を外し、放っておくとボロボロになってしまう酸性紙に脱酸性化処理を施したり、クリーニングしたりしたあとで丁寧に綴じ直す、集中力と根気の要る作業をしていただいたのにゃ~。おかげさまで、修復から10年以上経ったいまも冨田文庫の資料は元気に、皆さまの研究のお役に立っているのにゃ。
 
 こんなふうに、三文庫はいろんな人の助けを借りて、大事にだいじに整備された貴重書庫なのにゃ。どうかどうか、皆さまも大切に、そして存分にこれらの資料を活用していただきたいのですにゃ。いっぱい使ってにゃ~!

【書誌情報】
グラフィック社編集部編『本づくりの匠たち』グラフィック社、2011年(※)。白百合女子大学図書館蔵書。
小山賢市『小鹿のはなし』新興出版社、1948年。冨田文庫資料ID:T08440 / T08441。

  • 2015年に、グラフィック社編集部と名久井直子さんがタッグを組んで作った『ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる紙ものづくりの現場から』(グラフィック社)が出版されています。『ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる紙ものづくりの現場から』では、『本づくりの匠たち』で訪れた活字鋳造の株式会社中村活字と活版印刷の株式会社弘陽に2度目の見学をしており、さらに、東日本大震災を経験した製紙工場での話など、本好きならばぜひとも読んでおきたいトピックがたくさんあります。
皆様も、2025年度は猫村と一緒に、本についての本を読みませんか?

2025年4月2日水曜日

新刊本のお知らせ

『ちりめん本 海を渡った日本昔ばなし Japanese Fairy Tales

尾崎るみ監修 浜名那奈訳 東京美術 2025年4月

 一家に一冊は持っておきたいような、愛らしいちりめん本の影印本が出版されました。長谷川武次郎が明治18(1885)年に刊行したちりめん本「日本昔噺」シリーズより『桃太郎』『舌切雀』『猿蟹合戦』『花咲爺』『勝々山』『鼠嫁入』『瘤取』『浦島』『因幡の白兎』『竹箆太郎』の英訳版を選び、これら十作品の表紙・表題紙・本文・奥付など広告と裏表紙を除いたページが影印され、各作品の主要な登場人物を紹介する扉が新たに付け加えられています。

 実物よりも一回り大きい、125パーセント程度の拡大印刷がなされており、文字が読みやすくなっているのもこの本の良いところ。匡郭の使い方を工夫した、遊び心あるちりめん本の絵柄が、少し大きめに印刷されてとても見やすくなっています。じっくりと楽しみながら見ているうちに、新たな発見があるかもしれませんね。各作品のイメージカラーを背景色として、和紙のテクスチュアで印刷しているところも、まるで縮緬紙の肌合いを視覚的に再現しようとしているかのようで新鮮です。

 本書に収録された3つのコラムと5つのメモは児童文化研究センター研究員の尾崎るみさんが担当し、「日本昔噺」シリーズ誕生の経緯や、その立役者となった武次郎、このシリーズで活躍した絵師たち・翻訳者たちについて解説しています。日本語訳は同じく本研究センター研究員の浜名那奈さんが担当しています。日本の昔話を異なる言語で読むときの新鮮な感じが、浜名さんの訳文からも伝わってきます。

 本書は4月2日(水)発売。センター入り口にさっそく展示しました。ご来室の折には、是非、お手に取ってご覧ください。

2025年3月14日金曜日

春期閉室のお知らせ

 児童文化研究センターは、3月16日(日)から23日(日)まで閉室とさせていただきます。何卒ご了承くださいませ。

白百合を飛び立ち、新たな道に進まれる皆様に
心より、「おめでとうございます!」


論文集を発行しました

 今年度も論文集発行の季節がやって参りました。ご投稿いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。昨今の郵便事情はなかなか厳しくなっておりますが、関係者の皆様のお力添えをいただきまして、発送作業を終えることができました。

 当方で把握している範囲では、都内では発送(2/27)から約9日、東京以外の首都圏の都市部では約11日、関西圏の都市部では約12日程度で届いているようです。万が一、まだ届いていない方がいらっしゃいましたら、ご一報くださいませ。
 なお、センターの春期閉室期間は3月16日(日)から23日(日)とさせていただいております。お問い合わせへのお返しに少々お時間をいただくこともあるかとは存じますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

2025年2月20日木曜日

ミニ展示 2月21日~3月14日

センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行っております。

とても すてきな わたしの 学校

ドクター・スース と J・プレラツキー 文

レイン・スミス と ドクター・スース 絵

神宮輝夫 訳 童話館出版 1999年

展示中も借りられます。お手に取ってご覧ください。

2025年2月7日金曜日

ミニ展示 2月7~21日

 センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行っております。


バレエ物語集 あこがれの代表作10

ジェラルディン・マコックラン 著 

井辻朱美 訳、ひらいたかこ 絵、偕成社、2016


 展示中も借りられます。お手に取ってご覧ください。

2025年1月24日金曜日

現在開催中の企画展

 埼玉県東松山市の埼玉ピースミュージアム(埼玉県平和資料館)で、企画展「児童文学のなかの戦争」が開催されています。この企画展には、児童文化研究センター三文庫の資料が使用されています。

【埼玉ピースミュージアム(埼玉県平和資料館)】
https://www.saitama-peacemuseum.com/

テーマ展「児童文学のなかの戦争」観覧料無料
2025年1月18日(土)~3月9日(日)
※休館日はホームページでご確認ください。
9時~16時半(入場は16時まで)

 なお、この企画展を知った助手の一人が、「同じ東松山市にある丸木美術館にも行きたいな。1日で回れるかな」と、調べたところ、思いのほか距離があることが分かりました(車で15分程度、徒歩では1時間半程度)。どこでお昼ご飯を食べるかといったことも含め、予め計画を立ててから行くのが良さそうです。

2025年1月10日金曜日

ミニ展示 1月10~2月7日

 センター入り口で、センター蔵書のミニ展示を行っております。展示中も借りられます。お手に取ってご覧ください。

動物裁判 西欧中世・正義のコスモス
池上俊一 著、講談社現代新書、1990年

思考する動物たち 人間と動物の共生をもとめて
ジャン=クリストフ・バイイ 著、山口俊洋 訳
出版館ブック・クラブ、2013年

階級としての動物 ヴィクトリア時代の英国人と動物たち
ハリエット・リトヴォ 著、三好みゆき 訳、国文社、2001年

 今回は展示期間が長くなるため、動物をテーマに3冊同時に展示することにしました。
 いずれも興味深い切り口で、動物と人間の関わりを論じています。