この記事は、白百合女子大学児童文化研究センターオリジナルキャラクター「猫村たたみ(ねこむら・たたみ)」によるものです。猫村は、児童文化研究センターの貴重書庫「三文庫」を図書館司書として守り、その魅力を広く伝えるという職務遂行上の理由から、語尾に「にゃ」をつけたいわゆる「キャラ語」を用います。本ブログ記事をお読みくださる皆様におかれましては、キャラクターの性質をご理解の上、猫村たたみの世界観をお楽しみくださいますよう、お願い申し上げます。
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猫村たたみ |
皆さま、ご機嫌いかがかにゃ?
三文庫の守り猫、猫村たたみですにゃ。いよいよ新学期が始まったのにゃね。新学期の大学は賑やかで、私もなんだか楽しいのにゃ~。
私がお守りする「三文庫」は、白百合女子大学児童文化研究センターの貴重書庫なのにゃよ。三文庫は、「金平文庫(かねひらぶんこ)」「冨田文庫(とみたぶんこ)」「光吉文庫(みつよしぶんこ)」という三つの文庫で構成されていて、それぞれにユニークな来歴と蔵書をもっているのにゃ。世界中でここにしかない資料もあるのにゃよ!
ところで、皆さまはもう、2025年度の目標を立てられましたかにゃ? 私の2025年度の目標は「原点回帰」ですにゃ! 今年度は本についての本をたくさん読んで、司書としての知識に磨きをかけるのにゃ。
この前、図書館で素敵な本を見つけたのにゃ。タイトルは『本づくりの匠たち』。本づくりに関わるさまざまな「匠」の技を、デザイナーの名久井直子さんが見学して、本を作ったり修理したりする、いろんな名人のお話を聴くのにゃよ。印刷や製本や函作りなどの現場で名人がどんなふうにお仕事しているかを知ることができる、興味深い本なのにゃ。
たとえば、「小口印刷」。小口(こぐち)って、本の「背(せ)」以外の、紙の切り口が見えるところにゃよ。上の小口を「天」、下の小口を「地」とも呼ぶから、背の反対側の部分を特に指して「小口」と言うことが多いにゃね。辞書などの小口に、「あかさたなはまやらわ」って書いてあるの、あれ、便利にゃね~。ああいうのが小口印刷。小口印刷をする現場の人たちや、そこで使われている機械などを写真で見ながら、名久井さんのチャーミングかつ本づくりの勘所を踏まえた発言や、匠の皆さまとのやり取りを読むのがとっても楽しいのにゃ!
本を書いた人や装丁をした人、編集した人や出版社などの名前は奥付に書いてあるけれど、インクの色を調節した人や製本をした人、特殊な印刷や加工をした人たちは「縁の下の力持ち」にゃからね~。『本づくりの匠たち』では、滅多に見られない、貴重なお仕事風景を覗き見できちゃうのにゃ!
そんなわけで、私、この本をとても面白く読み進めていたのにゃ。すると、にゃ…にゃんと! 冨田文庫の資料がこの本のなかの写真に写っていたのにゃよ! 東京修復保存センター(TRCC)さんへの取材なのにゃ!
この本の83ページで、TRCCの修復現場を見学する名久井さんが「あっ! かわいい表紙がいっぱい!」と声を挙げ、ペーパー・コンサバター(歴史文書保存修復家)の安田智子さんが「白百合女子大学から預かったものですね。明治・大正から昭和にかけての児童書や雑誌です」と応じるのにゃ。そして、89ページの写真には、『小鹿のはなし』の表紙が! これ、冨田文庫の資料にゃよ。
そうそう、思い出したのにゃ! 文庫の整備をするときには、TRCCさんにたくさんの資料を修復していただいたのにゃよ。錆びてしまったステープラー(ホチキス)の針を外し、放っておくとボロボロになってしまう酸性紙に脱酸性化処理を施したり、クリーニングしたりしたあとで丁寧に綴じ直す、集中力と根気の要る作業をしていただいたのにゃ~。おかげさまで、修復から10年以上経ったいまも冨田文庫の資料は元気に、皆さまの研究のお役に立っているのにゃ。
こんなふうに、三文庫はいろんな人の助けを借りて、大事にだいじに整備された貴重書庫なのにゃ。どうかどうか、皆さまも大切に、そして存分にこれらの資料を活用していただきたいのですにゃ。いっぱい使ってにゃ~!
【書誌情報】
グラフィック社編集部編『本づくりの匠たち』グラフィック社、2011年(※)。白百合女子大学図書館蔵書。
小山賢市『小鹿のはなし』新興出版社、1948年。冨田文庫資料ID:T08440 / T08441。
- 2015年に、グラフィック社編集部と名久井直子さんがタッグを組んで作った『ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる紙ものづくりの現場から』(グラフィック社)が出版されています。『ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる紙ものづくりの現場から』では、『本づくりの匠たち』で訪れた活字鋳造の株式会社中村活字と活版印刷の株式会社弘陽に2度目の見学をしており、さらに、東日本大震災を経験した製紙工場での話など、本好きならばぜひとも読んでおきたいトピックがたくさんあります。
皆様も、2025年度は猫村と一緒に、本についての本を読みませんか?