2025年5月1日木曜日

本を鑑賞してみる 前編

児童文化研究センターのゆるキャラコンビ、猫村たたみと熊沢健児は、今年度、書誌学やブックデザインなどについて学ぶことにしました。前回、熊沢が『祖父江慎+コズフィッシュ』(パイインターナショナル、2016年)を手に取ったことをきっかけに、ふたりは祖父江さんとコズフィッシュがデザインした本を図書館で借り、鑑賞してみることになりました。

(なお、本記事はキャラクターの対話によって成り立っております。猫村につきましては語尾に「にゃ」のつくいわゆるキャラ語を使用しておりますが、記事の性質をご理解の上、お楽しみいただけましたら幸いです。 )


猫村たたみ
熊沢健児
猫村 熊沢君、おかえりにゃー。
熊沢 ただいま。猫村さんがリストアップしてくれた書籍のうち、シリーズものは1冊だけピックアップして借りて来たよ。全部じゃなくて申し訳ないけれど、さすがに、貸し出し冊数の上限を超えちゃうから。あと、『金曜日の砂糖ちゃん』(酒井駒子作、偕成社、2003年)はリザーブブックだったから、今回は遠慮してきた。
猫村 それでも6冊もあるのにゃ。重かったのではないかにゃ? ありがとうにゃ~。
熊沢 こちらこそありがとう。猫村さんのおかげで、こうして、いつもとは違った観点から本を鑑賞できるんだ。
猫村 にゃふっ、照れるにゃ~。
熊沢 借りてきた本を、テーブルに広げてみるよ。

〈テーブルに置かれた6冊の本〉
トーベ・ヤンソン『軽い手荷物の旅』トーベ・ヤンソン・コレクション1、冨原眞弓訳、筑摩書房、1995年(※)
ヒューバート・L・ドレイファス+ポール・ラビノウ『ミシェル・フーコー 構造主義と解釈学を超えて』井上克人+北尻祥晃+高田珠樹+山形頼洋+山田徹郎+山本幾生+鷲田清一訳、筑摩書房、1996年
アン・スウェイト『クマのプーさん スクラップ・ブック』安達まみ訳、筑摩書房、2000年
トーベ・ヤンソン+ラルス・ヤンソン『彗星がふってくる日』ムーミン・コミックス第9巻、冨原眞弓訳、筑摩書房、2001年(※)
小野不由美『くらのかみ』講談社、2003年(※)
中沢新一『精霊の王』講談社、2003年
※のついているものは、シリーズものです。

熊沢 ほとんどの資料のカバー(ジャケット)は外してあるね。バーコードシールや請求記号シールが貼ってあるし、蔵書印も捺してある。愛着のある大学図書館の蔵書だから普段は気にならないというか、むしろ、こういうシールや印影があるおかげでますます大事にしたくなるのだけど、今回は、ちょっと…。
猫村 そうにゃね~、できる範囲で見てみようにゃ~。
熊沢 そうだね。『祖父江慎+コズフィッシュ』の説明書きや写真図版を見て、補いながら鑑賞しよう。
猫村 この中で唯一、カバーが残っているのはトーベ・ヤンソンさんのコミックにゃ。
熊沢 カバーを外すと、オリジナルと同じイラストの表紙が出てくるんだって。
猫村 はにゃ~、カラフルにゃね~。
熊沢 『祖父江慎+コズフィッシュ』には、「日本でふつうに使われているプロセスインキって重すぎるので、カラーバランスをくずしたインキで印刷」(p.94)って書いてあるよ。
猫村 色のバランス感覚は国によって異なるのかにゃ~。
熊沢 そうだね。私にはよく分からないけれど…。
猫村 たしかに、色彩の表現って、比較対象がないと違いがよく分からないのにゃ…。
熊沢 それと、いま気づいたことなんだけど、もしかして、この巻の表紙絵は別の巻の表紙絵とつながっているんじゃ…ほら、同じポーズを取ったムーミンが、別々の表紙にいるよ。『祖父江慎+コズフィッシュ』の、この図版とこの図版なのだけど…。
猫村 本当にゃ! 絵の続きが、別の巻にあるのにゃ!
熊沢 本を読むときは1冊単位だから、シリーズものであったとしても、そのなかの1冊を手に取ってじっくり見れば良いのだと思っていたよ。でも、こうして1冊を単体で見るのって、なんだかもどかしいね。
猫村 にゃ~む。そうにゃね~。シリーズものについては、あとで一緒に図書館に行ってその場で見ようにゃ。そのときに、日本の絵本やコミックのカラー印刷と、祖父江さんが手がけたトーベさんのコミックとを比べようにゃ~。
熊沢 うん。それじゃ、連休明けにでも、一緒に図書館に行こう。
猫村 にゃ! 
(続く)