児童文化研究センターのゆるキャラコンビ、猫村たたみと熊沢健児は『祖父江慎+コズフィッシュ』(パイインターナショナル、2016年)で紹介された本のなかから、大学図書館で借りられる本をピックアップし、本の鑑賞を始めました。ブックデザインの勉強です。いま、ふたりは2冊の学術書が気になっているようです。
(なお、本記事はキャラクターの対話によって成り立っております。猫村につきましては語尾に「にゃ」のつくいわゆるキャラ語を使用しておりますが、記事の性質をご理解の上、お楽しみいただけましたら幸いです。 )
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熊沢健児「ところで、猫村さん」 |
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猫村たたみ 「どうしたのかにゃ? 熊沢君」 |
〈ふたりが見ている学術書〉
ヒューバート・L・ドレイファス+ポール・ラビノウ『ミシェル・フーコー 構造主義と解釈学を超えて』山形頼洋ほか訳、筑摩書房、1996年
中沢新一『精霊の王』講談社、2003年
熊沢:同じ学術書でも、対照的な2冊だね。
猫村:ま…眩しいのにゃ!
熊沢:『ミシェル・フーコー 構造主義と解釈学を超えて』の表紙は、蛍光色の、ピンク寄りの赤色だ。確かに、眼に染みる色だね。
猫村:本文を印刷する紙も、まばゆいばかりの白にゃ!
熊沢:うん、柔らかなオフホワイトやクリーム色の用紙に慣れた眼には、少々刺激的な白だ。
猫村:本文のレイアウトもドラマティックにゃ! しっかり余白を取るところと、文字で四角くビシィッと埋めているところとのコントラストがはっきりしているにゃ~。
熊沢:コントラスト。確かにそうだね。文字の大きさは定規で測ってみたら3ミリちょっとだった。もう一方の学術書、『精霊の王』は3.5ミリにわずかに届かないくらいかな(※)。
猫村:『精霊の王』の印象は穏やかにゃね。
熊沢:うん。
猫村:でも、本文に行き着くまで、ページを何枚もめくるようにできているのにゃ。一筋縄ではいかないのにゃね。
熊沢:『祖父江慎+コズフィッシュ』によると、表紙を開くと、遊び紙、プロローグ、目次、欧文捨て扉、和文飾り扉、巻頭口絵、大扉と続くんだって。
猫村:扉だらけにゃ!
熊沢:欧文捨て扉はフランス語。
猫村:Le Roi du Monde Caché…「ル・ロワ・デュ・モンド・カシェ」…直訳すると「隠された世界の王」ってとこかにゃ? 日本語の『精霊の王』というタイトルとは微妙に違うのにゃ。
熊沢:慣れ親しんだ日本語とは違うニュアンスを付け加えることで、ちょっと謎めいた感じになるね。
猫村:いくつも扉を用意して、本文までの物理的な距離を持たせているのにゃけど、それだけにゃなくて意味の上でも、慣れ親しんだ言葉の世界から、ちょっと遠く感じさせるような工夫をしているのかにゃ?
熊沢:そうかな…うん、そうかもしれないね。ところで、猫村さん。
猫村:どうしたのかにゃ? 熊沢君。
熊沢:なんか…気持ち悪い…。
猫村:にゃっ、にゃんと!?
熊沢:いや、吐くほどひどくはないんだけど、さっき見た『ミシェル・フーコー 構造主義と解釈学を超えて』の表紙の色合いが、私には刺激が強すぎたようだ。蛍光色の表紙を観察しているうちに、気分が悪くなってしまった。
猫村:それは大変にゃ! 今日はもうおしまいにして、ちょっと横になった方が良いのにゃ!
熊沢:申し訳ない。
猫村:ノープロブレムにゃよ! また日を改めて、一緒に本の鑑賞をしようにゃ~。
熊沢:うん。次は、図書館で、トーベ・ヤンソンコレクションとムーミン・コミックスを見よう。それから、『金曜日の砂糖ちゃん』(酒井駒子作、偕成社、2003年)も!
猫村:にゃ! 私たちは、私たちのペースで、鑑賞して、勉強すれば良いのにゃ。
熊沢:ありがとう。また、ブックデザインについて、学ぼうね。
猫村:約束にゃ!
蛍光色の刺激の強さに、すっかり参ってしまった熊沢健児。それでも抱き始めたブックデザインへの興味は消えないようで、ゆっくり、自分のペースで学ぶことを心に決めたのでした。
※『祖父江慎+コズフィッシュ』によると、本文の活字の大きさは『ミシェル・フーコー 構造主義と解釈学を超えて』が12.5級、『精霊の王』は13.5級です。