10月15日は、本学児童文化学科で創作の授業を担当された舟崎克彦先生のご命日に当たります。2025年は舟崎先生生誕80年、没後10年の節目の年です。
2025年度後期最初のミニ展示は、センター蔵書から、舟崎先生が手がけられた絵本や関連書籍をピックアップしました。センターにお立ち寄りの際はぜひ、入り口のミニ展示と、入って右側の壁に掛けられた絵本原画[舟崎先生作『うわさのマメずきん』(あかね書房、1994年)に長新太さんが描かれた絵]をご覧いただき、先生の思い出話に花を咲かせてください。
【展示中の書籍】
『ネギでちゅ』
舟崎克彦 作・絵
ポプラ社 2003年
なんでもできるけれど、なんにもしない。玉葱にそっくりの茶トラの猫、ネギちゃんのお話です。
『ギャバンじいさん』
舟崎克彦 作 井上洋介 絵
パロル舎 2006年
吹雪で狩りに出られないギャバンじいさんの家にやってきたのは、凍えたウサギ。そして、そのウサギを追ってやってきたのは…。さてさて、狩人のギャバンじいさんはどんな行動に出るのでしょうか?
『魔もののおくりもの』
舟崎克彦 作 宇野亜喜良 画
小学館 2008年
人を不幸にすることに厭きた魔ものは、今度は人を幸せにすることに決めました。魔ものは不幸せそうな少女を誘拐し、少女を喜ばせようとあの手この手を使うのですが…。
『ここにいる』
舟崎克彦 詩 味戸ケイコ 画
ポプラ社 2011年
こちらは、詩の絵本。大切な人の不在を抱きしめる少女のひとり語りとして、一篇の詩が綴られています。
『現代児童文学作家対談5 那須正幹・舟崎克彦・三田村信行』
神宮輝夫 インタビューア
偕成社 1989年
神宮輝夫先生によるインタビューに作家さんたちが応えるこの本で、舟崎先生のページを開いて最初に気づくのは、註の多さ(那須正幹さん24個、舟崎克彦先生44個(!)、三田村信行さん29個)。註とは、文章につけてその部分の意味を説明したり、補足したり、あるいは情報の出所を示したりするもので、私たちの論文執筆にも欠かせない重要な要素です。
どんな作家さんも、現実のあらゆる物事に知的アンテナを伸ばし、それらと自分の創作活動を結びつけながら、いきいきとした物語を綴っていらっしゃるわけですが、そのように伸ばした知的アンテナの数が註の数に影響しているとしたら、舟崎先生は飛びぬけて多くの知的アンテナをお持ちだったのかもしれません。
白百合女子大学児童文化学科OGにとって「舟崎克彦先生」といえば、入学式にはタキシード、真夏は麻のスーツを着こなし、ママチャリに乗るときはジャージといったように、TPOに合わせてビシッとお洒落に決める、素敵な作家の先生でした。この対談集に収められた写真3点のうちの1点には、豚さんと一緒に『エイリアン』を読む、ワイルドなタンクトップ姿の舟崎先生のお姿があります。これは一体、どんなTPOに合せているのでしょうか…?
今回のミニ展示でご紹介した4冊の絵本のうち、3冊はそれぞれ、井上洋介さん、宇野亜喜良さん、味戸ケイコさんが絵(画)を担当されています。どの絵本も個性的であると同時に、人間が生きるということに対しての根源的な問いかけを含んでおり、絵とことばが協働してその問いを美しくえがきだしています。センターにお越しの際には、ぜひ、お手に取ってご覧ください。