2022年6月16日木曜日

猫村たたみ×熊沢健児 トークセッション

5回書評コンクール 猫村たたみ×熊沢健児 トークセッション

猫村たたみ
(三文庫の守り猫)


猫村
:皆さま、ご機嫌いかがかにゃ? センター三文庫の守り猫、猫村たたみですにゃ!
 
熊沢:どうも、熊沢健児です。
 
猫村
:書評コンクールが開催できて、嬉しいのにゃ!
 
熊沢:うん。私も嬉しいよ。ご応募くださった皆さまと、投票に参加してくださった皆さまに、心よりお礼申し上げます。

熊沢健児
(名誉研究員)
 
猫村:いつも見守って下さる皆さまにも、ありがとうございますにゃ! それではさっそく、第5回書評コンクールの振り返りを始めましょうにゃ~。
 
熊沢:最初の書評、深見けいとさんが紹介してくださった東君平さんの「おはようどうわ」シリーズは、幼年童話だね。
 
猫村:恥ずかしながら、私、東君平さんという作家さんのことを知らなかったのにゃよ。にゃけど、心惹かれるシリーズにゃね~。
 
熊沢:うん。今まで知らなかった作品や資料のことを知ることができて、嬉しかったり、知らなかった自分が恥ずかしくなってドキドキしたり…でも結局、心惹かれて楽しいんだ。書評って面白いよね。
 
猫村:そうにゃね~。それに、書評で紹介された本を実際に手に取るとき、紹介してくれた人のこともちょこっと思い出すから、読書タイムが心温まる時間になるのにゃよ。
 
熊沢:そうだね。
 
猫村:ところでですにゃ、深見さんの書評にある、「消えゆくものへの優しい視点」という一言で、東さんの作風を知らないなりにも想像してみることができるような気がするのにゃよ。「生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける」を裏側から捉えたみたいな一言だと思ったのにゃ。
 
熊沢:古今集の仮名序だね。
 
猫村:にゃ! 季節の移ろいが主題になっているというところもまた、日本の古典文学と深いところで感覚的に繋がっていそうにゃよ。
 
熊沢:もしかして、勅撰和歌集などの「部立(ぶだて)」のことを考えてる? 確かに、歌集は季節で分類されていたりするね。
 
猫村:にゃ!
 
熊沢
:書評からずいぶん想像を膨らませるね。でも、実際に本を手に取るときは、まっさらな気持ちで読むんだよね?
 
猫村
:もちろんにゃ! にゃけど、本を手に取るまでのこの想像タイムも楽しいのにゃよ。
 
熊沢:なるほどね。
 
猫村:早く図書館に行きたいのにゃ!
 
熊沢:まあまあ、慌てずに。まずは書評コンクールの振り返りを最後までしようよ。次の、しあわせもりあわせさんが紹介する『いろんな国のオノマトペ』(世界のことばあそび⑤)は知識の本だね。小学生向けの補助教材を探していらしたのだろうか。書評から、CDや音筆などの音源を求めて苦労したことが分かる。外国語の発音は日本語と根本的に異なることもあるから、音源は大事。どうしたって必死になってしまうよね。生活環境や文化の違いも、言語には如実に表れるし。なんだかすごく共感してしまった。
 
猫村
:にゃ~む、大変なのにゃ…。
 
熊沢:うん。それから、純粋な好奇心というのもあるかもしれないね。
 
猫村
:そうにゃね~。研究者は好奇心の下僕(しもべ)にゃからね~。
 
熊沢:いやいや、下僕はちょっと言い過ぎだよ(苦笑)。…ただただシンプルに、知りたかったものを知るということや、見たかったもの・聞きたかったものを見聞きするということが、すごく幸せなんだよ。
 
猫村
:しあわせもりあわせさんも、熊沢君も、根っからの研究者気質なのにゃね。
 
熊沢:そうかもね。そして、欲しかった本や音源を実際に手に取り、聴くことで、新たな好奇心が生まれる。しあわせもりあわせさんの書評も、最後の方がそんな感じだった。
 
犬の鳴き声が平安時代には「びょうびょう」だったことや、ニワトリの鳴き声が全国で「コケコッコー」に統一された経緯が書かれており、国内のオノマトペの時代性や地域性について調べてみたいと思わせる。
 
諸外国の言語における気候風土による違いも気になるけれど、日本国内でも時代や地域によってオノマトペにどんな違いが出てくるのか…興味深い問題だね。
 
猫村:にゃ! 熊沢君の眼が爛爛と輝いているのにゃ。
 
熊沢:だって、面白そうなんだもの!
 
猫村
:こんなにウキウキしている熊沢君、久しぶりに見たのにゃ。書評コンクールが開催できて、本当に良かったのにゃ~(しみじみ)。にゃけど、熊沢君の書いた『キュリー夫人』の書評は、ちょっと翳りがあるのにゃね? この本自体はとっても素敵な伝記にゃのに。
 
熊沢:マリー・キュリーは20世紀初頭に活躍した人物だけど、20世紀は科学の世紀でもあり、戦争の世紀でもあったからね。現代を生きる者のひとりとして、科学技術の進展を素直に喜べないようなところが、私にはあるのかもしれない。
 
猫村:にゃ~む…。
 
熊沢:テクノロジーが世界にもたらす影響は、いつも、私たちの予想をはるかに上回る。光吉夏弥先生は、どんなことを思いながらこの伝記を翻訳していたのだろうか。
 
猫村:それは、私も知りたいのにゃ~。
 
熊沢:もっと研究を進めていかないと。
 
猫村
:そうにゃね。『キュリー夫人』はセンターにも蔵書があって借りられるから(「光吉夏弥先生翻訳作品」のコーナーにあります)、まだ読んでいない方はぜひお手に取っていただきたいのにゃ。
 
熊沢:うん。ところで、君は三文庫に所蔵しているフランス語の絵本に挑戦したんだね。
 
猫村:そうなのにゃ。金平文庫と光吉文庫の両方に所蔵が確認できるのにゃ。
 
熊沢:「どう受け止めれば良いのか、分からない」って、すごいコメントだと思った。
 
猫村:にゃにゃにゃ、批評にゃなくて、ただの感想になってしまったかにゃ~。
 
熊沢:いや、「分からない」も作品の一部だもの。それに、正直なところが君らしくて良いと思ったよ。
 
猫村:正直は人生の宝なのにゃ!
 
熊沢:そうだね。さて、最後の遠藤さんの書評は、14年前に開催された展覧会の図録を扱っているね。
 
猫村:図録も人生の宝なのにゃ!
 
熊沢:うん。書籍として書店でも入手可能な展覧会カタログは最近ますます増えているけれど、その時・その展示会場でしか手に入らないというものもあるから、必要だと思ったら迷わず買うようにしておきたいよね。まあ、無理のない範囲で良いと思うけれど。
 
猫村:にゃ! 無理は禁物にゃ。
 
熊沢:遠藤さんは少し批判めいたことも書いているけれど、会場で手に入れた一期一会の図録だからこそ、批判したくなるのだろうね。それだけ思い入れのある一冊なのだから。
 
猫村:そうにゃね。批判するにしても、動機はいつだって愛がいいのにゃ!
 
熊沢:『きらり』(藤井風さんの楽曲)の歌詞みたいなこと言うね。
 
猫村:私、この歌にシンパシーを感じるのにゃ! …んーふふーふふーふーふー、んーふふーふふーふーふーふふー…(猫村、『きらり』のメロディをハミングしながら踊り出す)
 
熊沢:あー…(また、始まっちゃったよ。踊り出すと止まらないんだよなあ)。
 
猫村:んーふふーふふーふーふー、んーふふーふーふーふーふーふふー…
 
熊沢:これにて、第5回書評コンクールの振り返りを終わりにします。皆さま、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
 
猫村
:ありがとうございましたにゃ。私はこれから図書館へ参りますにゃ。んーふふーふーふーふーふー、んーふふーふーふーふーふーふふー…(猫村、踊りながら歩きだす。※危険ですので決して真似をしないでください
 
熊沢:おーい、踊りながら歩くと危ないよ! ちゃんと周りを見て!
 
次回の書評コンクールは来年の春頃を予定しております。皆さま、どうぞふるってご参加ください。
ありがとうございました。