こんな本がほしいな、と思っていたら、望んでいた以上の本に出会えて感動した。それが、この『いろんな国のオノマトペ』だ。英語のオノマトペを集めた本がないものかと探していて、手に取ることができた。
英語だけでなく、韓国語、中国語、タイ語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語の計9か国語のオノマトペがまとめられている。小学生の調べ学習や外国語学習用に作られたらしく、収録語数こそ少ないものの(約360語)、動物の鳴き声や風雨等の自然音、生活音など、項目別に一覧にされていて、国ごとの違いが一目瞭然だ。
何よりすばらしいのは、各言語のネイティヴが発音を収録した付録のCD。シリーズ5巻分が、CD1枚に収められている。カタカナ表記では限界のある各国語の発音が、CDのおかげで非常によくわかる。さらに、同シリーズは「音筆(おんぴつ)」対応になっており、各単語に添えられたマークに音筆で触れると、音筆がその単語を読み上げてくれるらしい。
最初に図書館で本書を借りたときには、当然のようにCDが付いていた。ところが、再度借りたときには、これまた当然のようにCDが付いていなかった。CDポケットの跡もない。司書の方に調べていただいても、その自治体所蔵の同シリーズには、いずれもCDは付いていないという。きつねにつままれた思いで、都内にある図書館の蔵書を検索した。検索しても、オンラインデータでは、CDが付属しているかどうかまではわからない。しかも、他の自治体との相互貸出では、CDは扱っていないという。
なかば絶望して、音筆の購入を考えた。本書が税別2,500円なのに対し、音筆は税別で12,000円もする。だが、背に腹は代えられない。本書は絶版なのだから。それなのに、無情にも音筆は「在庫切れ」。どうやら、近年ずっとこの状態らしい。
結局、先ほどとは別の自治体が所蔵している同シリーズ3セットのうち、ある館の第1巻にだけCDが付属していることがわかり、直接出向いて借りることができた。音声資料のありがたさを味わいながら聴く。ああ、ニワトリの鳴き声ひとつとっても、国によって聞こえ方がこんなにも違うのだなぁ。ロシア語の発音は、ヨーロッパの他の言語と比べてかなり独特な感じがするけれど、やはり寒さが関係しているのだろうか。
各国の比較ができるだけでなく、日本国内の違いにも思いを致せるのが、本書の優れている点のひとつだ。犬の鳴き声が平安時代には「びょうびょう」だったことや、ニワトリの鳴き声が全国で「コッケコッコー」に統一された経緯が書かれており、国内のオノマトペの時代性や地域性について調べてみたいと思わせる。正直に言って、本書は小学生だけに読ませるには惜しい。もっと大人の目に触れるところに置いてしかるべきだろう。そうすればおのずと需要が高まり、シリーズが復刊するかもしれない。そうなる日を待ち望んでいる。
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