2021年12月8日水曜日

ムナーリとレオーニ(11)

 1932年② ムナーリとカンパリ

 

 今回は、ちょっと立ち止まって、ムナーリがカンパリ社のためにした仕事を見ておきたい。

 前回、年譜からは、ムナーリが若いうちから順調にキャリアを積み上げていたことが読み取れた。「ブルーノ・ムナーリ」展図録の解説(p.49 担当:盛本直美)によると、カンパリ社では1927年から1932年の間に、顧客への贈呈品として『カンパリの吟遊詩人』という全5集の詩集を限定制作していたそうだ。詩は、劇作家で詩人のレナート・シモーニが書いた。ムナーリが挿画を担当したのは第5集だが、同じく図録の解説によると、それは、次のようなものだった。

 

ムナーリが担当した第5集は、当時としては珍しいスパイラル製本で、宙空に浮かぶ矩形や人物像で構成された挿絵が、愛を主題とした27遍の詩に彩を添えている。

 

図録では、表紙に加え、中のページが見開きで2面、掲載されており、ふたつの挿画を見ることができる。表紙に描かれた、赤い(カンパリ色?の)果物らしい物体が印象的だ。見開き2面のうち、L’AMORE DI DON GIOVANNIという詩に組み合わされた挿画を見ると、幾何学的な形態(台形)と有機的なモチーフ(包丁で果物を切る人と、カッティングボードの上で切られている果物)を組み合わせ、画面中にさりげなく小さなハート(一般的には“愛”を指す記号)をあしらっている。主張しすぎず、しかし気が利いている。

 

【書誌情報】

奥田亜希子編「ブルーノ・ムナーリ年譜」(『ブルーノ・ムナーリ』求龍堂、2018年、pp. 342-357

 

遠藤知恵子(センター助手)