2023年1月13日金曜日

丘の上

    1

 

ひとつがいのけだものたちが

ぼうぼうと草の生えた丘の上に

ひっそりとした小屋を建て、住んでいた。

 

けだものたちのからだからは

つんと鼻を刺す

あぶらくさいような

すえたようなにおいがした。

 

けだものたちは

おたがいの毛むくじゃらの顔を見あっては

あまりの醜さに

声を張り上げて泣いた。

涙と鼻水、汗と涎をだらだら流し

ぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあ、

泣き、わめき

自分たちの泣き声のいやらしさに

耳がもげそうになりながら、泣いた。

 

そして泣き疲れると

けだものたちは

寄り添い、眠るのだった。

 

   2

 

眠りから覚めると

けだものたちは小屋を出た。

 

生い茂る草のなかをくねくねと曲がる細い道を歩き、丘を下り、

行った先には花咲く庭があった。

空が水遣りをするこの庭に

けだものたちは、ほうぼうから花の種を集めてきて、蒔いていた。

 

花たちは入れ替わり、立ち替わりして

一年中、咲いた。

大きくひとつ、誇らかに咲く花も

身を寄せ合って咲く、細かな花の群れも

みんないっしょくたに、とりとめもなく咲き

咲き終わると、

あるものは地上に種を落として枯れ、

あるものは地下に根を残し、眠りについた。

 

けだものたちは園丁となって

雑草を引き抜き

葉っぱや花びらについた虫は

そうっと唇を寄せて吸い、

胃袋の中で退治した。

 

花々のあいだを風が吹きわたり

やさしく涼しい花の香りが

けだものたちの長い毛を梳るのだった。


遠藤知恵子(児童文化研究センター助手)