1
ひとつがいのけだものたちが
ぼうぼうと草の生えた丘の上に
ひっそりとした小屋を建て、住んでいた。
けだものたちのからだからは
つんと鼻を刺す
あぶらくさいような
すえたようなにおいがした。
けだものたちは
おたがいの毛むくじゃらの顔を見あっては
あまりの醜さに
声を張り上げて泣いた。
涙と鼻水、汗と涎をだらだら流し
ぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあ、
泣き、わめき
自分たちの泣き声のいやらしさに
耳がもげそうになりながら、泣いた。
そして泣き疲れると
けだものたちは
寄り添い、眠るのだった。
2
眠りから覚めると
けだものたちは小屋を出た。
生い茂る草のなかをくねくねと曲がる細い道を歩き、丘を下り、
行った先には花咲く庭があった。
空が水遣りをするこの庭に
けだものたちは、ほうぼうから花の種を集めてきて、蒔いていた。
花たちは入れ替わり、立ち替わりして
一年中、咲いた。
大きくひとつ、誇らかに咲く花も
身を寄せ合って咲く、細かな花の群れも
みんないっしょくたに、とりとめもなく咲き
咲き終わると、
あるものは地上に種を落として枯れ、
あるものは地下に根を残し、眠りについた。
けだものたちは園丁となって
雑草を引き抜き
葉っぱや花びらについた虫は
そうっと唇を寄せて吸い、
胃袋の中で退治した。
花々のあいだを風が吹きわたり
やさしく涼しい花の香りが
けだものたちの長い毛を梳るのだった。
遠藤知恵子(児童文化研究センター助手)