2026年3月5日木曜日

ミニ展示 3月5日~7日

 3月7日は佐藤宗子先生の講演会。「佐藤宗子先生講演会 ミステリからみる〈子ども〉―人物造型・語り・「子ども」観―」という講演会テーマに因み、今回はセンター蔵書の中から推理小説(もちろん児童書です!)を1冊、ご紹介します。

『名探偵金田一耕助 1 仮面城
横溝正史 作 D.K 絵
ポプラポケット文庫 2005年

 1951年4月から「仮面城の秘密」というタイトルで雑誌連載され、翌年に改題して単行本化された作品です。主人公は、小学6年生の竹田文彦君(12歳)。敗戦の記憶がまだ色濃く残っている時期の作品らしく、満州の奉天から引き揚げていまは東京で家族とつつましく暮らしているという時代設定です。
 満州国というと、1932年から1945年まで現在の中華人民共和国の東北部に存在した、当時の日本の傀儡国。本文中には「戦争後、満州からひきあげてくるまでは、文彦君の一家も、奉天ではなやかなくらしをして、自動車の三台も持っていたくらいですが」(p.2)とあって、奉天とはどのようなところだろうかと、読み始めてまだ2ページ目というところで、すでに調べものをする手が止まらなくなりそうになります(※)。
 そして、パラパラとページを繰ると、世田谷区(白百合女子大学がある調布市の、お隣の区)とか、井の頭公園(京王線沿線)とか、見慣れた地名や単語が出てきます(近い…)。大学のご近所から物語がどのように広がりを見せていくのかも、気になるところです。

 佐藤宗子先生のご講演は「子ども」を中心に据えたもの。講演会の後、推理小説をより面白く読めるようになるのではないかと、とても楽しみです。

※「奉天」という地名の記された写真を、児童文化研究センターの蔵書から探してみたところ、『いわさきちひろ写真資料目録』(公益財団法人いわさきちひろ記念事業団、2024年)の中に2枚、1939年に撮影されたものをみつけることができました。この目録では、国名は「満州」ではなく「中国」と記されています。傀儡国家の建設という暗い歴史とは裏腹に、写真で見る建物や女性たちの服装はモダンでハイカラ。複雑すぎて震えます。気になる方はぜひ、お手に取ってご覧ください。