2024年10月11日金曜日

熊沢健児の密かな自慢

サイン、いただきました。

夏休みも何だかんだ忙しかったが、トークイベント「武井武雄のネットワーク」(目黒区美術館ワークショップ室、2024824日)には、頑張って行ってきた。

民藝運動の周辺(アウト・オブ・民藝)から見た人々の繋がりを、童画家、武井武雄を中心にひもとく対談。講師はデザイナーの軸原ヨウスケさんと美術家の中村裕太さんのお二人である。

児童文化研究をしている以上、外せない展覧会である上に、『アウト・オブ・民藝』(誠光社、2019年 ※)の著者が武井武雄について語るとは…! これは、聴きにいかねばなるまい。他の予定(これも私にとっては重要なものだったが)をキャンセルして目黒川を渡り、美術館へ向かった。このトークイベントは、目黒区美術館で開催された企画展「生誕130年 武井武雄展 ~幻想の世界へようこそ~」(会期:76日~825日)の関連イベントである。アウト・オブ・民藝と言えばやはり人物同士の相関図だが、壁に掲げられた人物相関図パネルは、武井武雄を中心に人々の繋がりの糸が張られた巨大な蜘蛛の巣のようだった。意外な関係や納得の繋がりを見つけることができて、かなりの長時間、楽しく眺めることができる、非常に興味深い蜘蛛の巣なのである。縮小版の相関図はハンドアウトになっており、観覧者は自由に手に取り、持ち帰ることができた。美術館の外(アウト・オブ・美術館…!)でも気軽に復習することができるし、小さくたたんでポシェットにしまっておけば、気になったときにちょっと広げて確かめることができる。

トークイベントは面白く、刺激的であるだけでなく、人物同士の「仲良し」が根底にあって、それらの人間関係をもとに数珠つなぎに話が進んでいくため、聴いていて何となく心が温まる(友達って、いいな…)。

イベント終了後は、話題になった資料を見せていただける時間(なんと太っ腹な!)。資料を見ながらお二人に話しかけることのできるタイミングをうかがい、そして——

「あ、あの…サインください!」

 差し出したのは、2022年発行の『アウト・オブ・民藝 ロマンチックなまなざし』(軸原氏・中村氏の共著、誠光社)。予習のために買って読んでおいた小さな冊子である。この冊子では、蜘蛛の巣状の相関図ではなく、ある日・ある所で出会ったふたりという、個人と個人の関係性に注目し、想像力によって史実をドラマへと復元しようとする。このように「ロマンチックな想像力を膨らませること」(p.5 中村氏「はじめに」より)は、我々学問の徒には許されていないことだが、というより、許されていないからこそ大事にしたい。

ところで、軸原氏・中村氏は快くこの本にサインをくださった。表題紙に並ぶふたつのこけしのサインである。こけしの枠をえがいてくださったのは軸原氏。眼鏡をかけた中村氏のこけしは、ちょっとよそ見をしている。

 ※※

どちらのこけしも、ご本人に似ているようで似ていないところが可愛らしい。ありがとうございます。大事にします。


※よろしければ、過去の記事「熊沢健児のお気に入り本」(2019.12.5)をご参照ください。熊沢は軸原氏・中村氏の隠れファンです。

※※熊沢が持っているのは、サイン入りの『アウト・オブ・民藝 ロマンチックなまなざし』です。素敵な表紙図案を手がけられたのは、安藤隆一郎氏。造本は軸原氏が担当しています。