2022年7月7日木曜日

熊沢健児の読書日記②

デヴィッド・ウィーズナー『かようびのよる』当麻ゆか訳、福武書店、1992

むかし住んでいた家の近くの池に、ヒキガエルが住んでいた。毎年6月になると、尻尾が取れて蛙の形になったばかりの、豆粒みたいな蛙たちが(喩えるなら、ハエトリグモくらいのサイズだった)、一斉に移動を始める。

近くに水辺なんてなかったけれど、とにかく彼らは池を出て、みな一様にひとつの方角を目指し、舗装路の上に小さな跳躍を重ねて進んでいった。どこか、ここではないどこかへ。道半ばにして事故に遭った蛙たちが、路上にぽつぽつとダークグレーの染みとなっているのは見かけたが、彼らが結局どこに行ったのかは、分からずじまいだった。

『かようびのよる』のページを繰りながら、私はあの6月の蛙たちのことを思った(あの子たちはまだ小さかったから、きっと、みんな…)。彼らも、この絵本に登場する蛙たちくらい大きくて、大胆で、睡蓮の葉に乗っていたらよかったのに。絵本の蛙たちが活き活きとしていればしているほど、悲しくなった。

絵本の最後のページを閉じてからもしばらくの間、考えてしまったのだった。


熊沢健児(ぬいぐるみ・名誉研究員)