この年、レオーニはジョセフ・アルバース(1888-1976)からの依頼を受けて、ブラック・マウンテン・カレッジで夏の講習を行なった。森泉文美「だれも知らなかったレオ・レオーニ」によると、この学校は、アメリカにバウハウスを移植した美術学校の一つだそうだ。夏の講習でレオーニが行なった授業について、「イメージによる言語の構文がどんなものなのか、写真コラージュを通じて学生と考えることを試みました」(206)とのことである(引用文中の「言語」とはもちろん、毎日私たちが喋っている普通の言葉ではなくて、物の形や色といったもので構成されるイメージが、私たちにどんな意味を読み取らせるかという意味での、鍵括弧付きの「言語」だろう)。レオーニが広告デザイナーとして手がけてきた作品の図版は、この図録にいくつも収められていて、写真を使ったものもかなりの数を確認することができるのだが、「イメージによる言語の構文」に、絵ではなく現実の風景を写しとる写真を用いているというのが面白い。
いま私たちの周りに溢れている「写真」は、そのほとんどが、スマートフォンなどで撮影した電子データだから、当時の写真(フィルムに感光させて撮影し、現像して完成する)とはちょっと勝手が違っていそうだけれども、スマホのイメージが溢れかえっている現在の状況を、もしもレオーニが知ったなら、そのイメージからどんな構文を見つけ出すのだろうか…なんて、ちょっと妄想してしまう。
一方のムナーリは、ミラノのベルガミーニ画廊で「抽象絵画」展という個展を開催し、同じくミラノのチリベルティ画廊で「抽象主義者展」というグループ展に参加している。
【書誌情報】
奥田亜希子編「ブルーノ・ムナーリ年譜」『ブルーノ・ムナーリ』求龍堂、2018年、pp.342-357
「レオ・レオーニ 年譜」『だれも知らないレオ・レオーニ』玄光社、2020年、pp.216-219 ※執筆担当者の表示なし
森泉文美「だれも知らなかったレオ・レオーニ」『だれも知らないレオ・レオーニ』玄光社、2020年、pp.206-215
遠藤知恵子(センター助手)