この年、ムナーリは1月と11月に個展を開催している。1月に開催された個展は、その名もずばり「ムナーリ」展(ミラノ、チェントロ・ストゥーディ・グラフィチ)。11月に開催された個展は「ブルーノ・ムナーリのファウンド・オブジェ・コレクション展」(ミラノ、エリコッテロ画廊)。
ファウンド・オブジェって何だろう?と、『岩波西洋美術用語辞典』(2005)で調べてみると、フランス語の「オブジェ・トルヴェ」で載っていた。
「見出されたもの」という意味。自然物にせよ人工物にせよ、芸術家によって意図して制作されたのではないにもかかわらず、芸術家が何らかの美的効果や具体的な対象との形態的類似を認めたもの。ダダ、シュルレアリスムなどの芸術家に好んで用いられた。英語で「ファウンド・オブジェクト」ともいう。(p.64)
「自然物」と「人工物」の両方だということだから、当てはまりそうな「もの」の範囲が広すぎて、ちょっと想像しづらい。ただ、「ファウンド・アート」という言葉が、ダダやシュルレアリスムといった芸術運動とご縁のある用語であることは分かった(そう言えば、今年はアンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表してから100年目に当たる年ではないか!)。
時代をちょっと先取りすることになるが、50年代後半のムナーリは、折りたたんで持ち運べる〈旅行のための彫刻〉のシリーズに取り組んでいる。「もの」と「もの」を取り巻く空間との関係性に対する関心を継続して持ち続けているのだろうな、と想像した。
また、ムナーリは同じ年に4つのグループ展に参加している。そのうちのひとつ、11月から12月にかけて開催された「ベルナスコーニ・コレクション」展のために、手作りの《読めない本》を12種類、各20部制作したそうだ。全部で240部の本を手作り…芸術家って、ほんとうに大変だなぁ。
【書誌情報】
奥田亜希子編「ブルーノ・ムナーリ年譜」『ブルーノ・ムナーリ』求龍堂、2018年、pp.342-357
「レオ・レオーニ 年譜」『だれも知らないレオ・レオーニ』玄光社、2020年、pp.216-219 ※執筆担当者の表示なし
益田朋幸・喜多崎親編著『岩波西洋美術用語辞典』岩波書店、2005年
遠藤知恵子(センター助手)