1963年
1963年のレオーニは、1950年から制作していた「想像肖像」シリーズの作品を、ミラノのナヴィリオ・ギャラリーで展示。実在する人も、実在しない人もモデルになっているという面白いシリーズである。また、この年、レオーニの代表作中の代表作が出版される。『スイミー』である。レオーニにとって4冊目となるこの絵本は、1964年のコルデコット賞次点に、そして、1967年第1回プラスチラバ世界絵本原画展で「金のりんご賞」を受賞する。日本では、谷川俊太郎訳で1969年に好学社から刊行されている。小学校の国語教科書に掲載されたり、是枝裕和監督の映画『万引き家族』(2018年)に登場したり、『スイミー』ほどたくさんの人に親しまれている作品はないのではないだろうか。
しかし、「だれも知らないレオ・レオーニ」展図録によると、『スイミー』の原画は行方不明だそうだ。会場で「原画」として展示されていたのは、レオーニが制作した別ヴァージョンのものである。レオーニは『スイミー』制作にあたって、モノタイプという、偶然を活かした版画技法を用いており、同展開催前に行われた調査で、関連作品が大量に発見されている(松岡希代子「『スイミー』原画の謎」p.185)。それにしても、本物の原画はどこにあるのだろう。探し物の常として、忘れかけた頃に思いがけないところからひょっこり出てくるのかもしれない。見つかったら、それは絵本史に残る大発見になる。
さて、1963年のムナーリはと言えば、相変わらず精力的に作品発表をしている。個展を1回と、グループ展を5回。
ところで、前回、1962年にオリヴェッティ店舗で開催されたグループ展について、ウンベルト・エーコの『開かれた作品』についてのリポートを熊沢健児氏にお願いしようと書いた。しかし、「頼めば3~4週間で書いてくれるはずだ」という私の言葉が熊沢氏の気に障ったらしく「そんな簡単に書けないよ!」と叱られてしまった。あれからもう数か月も経つのに、会うたびにご機嫌斜めである。自分で読んでリポートするしかないのか…困った。
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| ご機嫌斜めで、背を向けて寝っ転がる熊沢氏。 普段は、下の画像に見る通りの紳士です。 |
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| 熊沢健児(くまざわ・けんじ) 児童文化研究センター名誉研究員(ぬいぐるみ)。 センター入り口のミニ展示の隣で皆さまをお迎えします。 |
【書誌情報】
奥田亜希子編「ブルーノ・ムナーリ年譜」『ブルーノ・ムナーリ』求龍堂、2018年、pp.342-357
「レオ・レオーニ 年譜」『だれも知らないレオ・レオーニ』玄光社、2020年、pp.216-219 ※執筆担当者の表示なし
遠藤知恵子(センター助手)






