2021年4月28日水曜日

【書評】フェリクス・ホフマン絵、グリム童話『おおかみと七ひきのこやぎ』せたていじ訳、福音館書店、1967年

 皆さまは、『PUI PUI モルカー』はお好きかにゃ? 監督は映像作家の見里朝希さん。見里さんが初めて手掛けた全12話のテレビアニメシリーズなのにゃって。240秒の短いパペットアニメーションに、モルモットの愛らしさがぎゅっと詰まっていて、毎朝楽しみにしておりましたのにゃ~。

 ところでですにゃ、見里さんが大学院の修了作品として制作した『マイリトルゴート』(2018)はたくさんの賞をもらったことで知られる作品にゃけど、皆さま、こちらはご覧になりましたかにゃ? グリム童話の「おおかみと七ひきのこやぎ」の後日談として作られていて、狼に食べられた子山羊たちが胃の中で消化されかかり皮膚が焼け爛れるという、にゃんとも即物的な描写をしておりますにゃ。にゃけど、どんな姿になってもフェルトでもこもこしたこやぎたちは可愛いのにゃ~。そして、ちょっぴり怖い可愛いさだけにゃなくて、現代の児童虐待の問題とも接点があり、多様な解釈ができるところも魅力にゃね~。

そうなってくると、気になるのがアニメーション作品のもととなったグリム童話「おおかみと七ひきのこやぎ」にゃ。見里さんがどの本を参照しているのかは分からないのにゃけど、私にゃったら、まずは瀬田貞二さん訳の超ロングセラー絵本『おおかみと七ひきのこやぎ』を手に取ってみますにゃね。

もちろん、絵本『おおかみと七ひきのこやぎ』では、こやぎたちは消化されたりしないのにゃ。おかあさんやぎが眠っているおおかみのおなかを切り開くときも、「一はさみ いれるがはやいか、ぴょこんと こやぎの あたまが つきだしました」とあって、こやぎたちはみんなピンピンしているのにゃよ。絵を見ると、おおかみの寝姿はほぼ真横から描かれていて、傷口が見えないのにゃ(ちなみに『マイリトルゴート』は、おおかみのおなかの内側から外を見るような視点を取っていて、映像にはおおかみのピンクの胃粘膜がしっかり映し出されておりますにゃ)。おかあさんやぎと元気に生還したこやぎたちがおおかみのおなかに石を詰め込むシーンにゃんて、まぁ、ピクニックみたいに楽しそうですにゃ。

…にゃ~む。この嬉しそうな表情、皆さまはどう思いますかにゃ? 私は、慄いてしまいますのにゃよ~。にゃって、おなかに石を詰められたおおかみは井戸で溺れてしまうのにゃよ?

 誰もが知っている『おおかみと七ひきのこやぎ』にゃけど、やはり一筋縄ではいかないと思うのにゃ。この戦慄、皆さまと分かち合いたいですにゃ~。


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この書評は、2021年春に開催された書評コンクールの応募作品(書評番号7)です