書評コンクールが成立しなくて残念だったのにゃ~。ちょうど今の時期は学会もあるし、忙しい時期にゃからね。仕方ないですにゃ。今回の反省を生かし、来年度は熊沢君と一緒に頑張って、コンクールを盛り立てますにゃ。
ところで、皆さまは窓はお好きですかにゃ? 私は大好きですにゃ。明るくて温かくて、風が通り抜けて、お空と挨拶ができる場所にゃね~。コンクールはなくなってしまったのにゃけど、1冊だけ、本を紹介させていただきたいと思いますにゃ。
『Window Scape 窓のふるまい学』は、窓の研究がもとになってできた本ですにゃ。その研究では、世界中の窓を現地で実測・聞き取り調査して、窓のまわりで人がどんなふうにふるまうかを観察したのにゃって。この本は、建物とその用途、建っている都市や国の名前、気候区分などを、寸法を書き込んだスケッチと写真とともに収録していて、スケッチには、窓の前で憩ったり、お仕事したりしている人の姿も描き込まれているのにゃよ。窓だけ見るのではなくて、その窓がどんなふうに人の暮らしや街や自然環境に溶け込んでいるのか、窓にまつわるいろんな「ふるまい」から窓を見ているのですにゃ。
この本では、調査して観察した窓を「光と風」、「人とともに」、「交響詩」と大きく三つに整理し、それをさらに細かく分けて窓の記録を収めているのにゃ。その、窓を分けて整理するための言葉がとても素敵にゃから、ここに紹介しておきますにゃ~。
・「光と風」:「たまりの窓」「にじみの窓」「彫刻する窓」「光の部屋」「影の中の窓」「風の中の窓」「庭の中の窓」
・「人とともに」:「はたらく窓」「通り抜けの窓」「座りの窓」「眠りの窓」「物見の窓」
・「交響詩」:「連なりの窓」「重なりの窓」「窓の中の窓」
(すべて目次より)
「光と風」の分類では、自然光や外気と窓がどんな風に関わり合っているかという視点からいろいろな窓を配列しているのにゃ。例えば、「たまりの窓」の写真を見ると、窓が光をそっと抱き込むような不思議な空間を見ることができるのにゃよ。「人とともに」はその名の通り、窓と人とがどう関係しあっているか、人のふるまいをもとに分けているのにゃね。「眠りの窓」にゃんて、うっとりしてしまうのにゃ~。「交響詩」は、窓と窓との関係を音楽に喩えているのにゃね。いくつも連なったり、二重窓になったり、さらに複雑に配置されたりすることによって、調和的な空間が生まれるのにゃ。
人の心と同じように、閉じたり開いたりする窓にゃから、関係性によって窓を見ていくというのは面白いにゃね。
この本のはじめのほうに書いてあったのにゃけど、気候風土によって異なる個性を持った窓の観察は、少しずつ地域を移動しながら見ていくと、窓どうしの似ているところや違っているところが分かりやすくなるらしいのにゃ。だから、この本は、土地から土地へとちょっとずつ移動していく、旅人の視線で窓を記録していった本なのにゃね、きっと。
児童文学作品にも「窓」が重要なモチーフになっているものは少なくないのにゃ。いろいろな窓を眺めにゃがら、好きな作品に登場する窓をあれこれ想像してみようにゃ~。
【書誌情報】
東京工業大学塚本由晴研究室編『Window Scape 窓のふるまい学』フィルムアート社、2010年