2021年5月20日木曜日

第4回書評コンクール 結果発表

 

書評コンクールの投票結果を発表いたします。

・書評番号1 ピアノ(一般)・・・・・・・・・・・得票数3

・書評番号2 勝又 芽依(学生)・・・・・・・・・得票数2

・書評番号3 三井 彩愛(学生)・・・・・・・・・得票数1

・書評番号4 赤坂 恵里(学生)・・・・・・・・・得票数1

・書評番号5 熊沢 健児(ぬいぐるみ・名誉研究員)得票数4

・書評番号6     遠藤知恵子(その他)・・・・・・・・得票数0

・書評番号7  猫村たたみ(三文庫の守り猫)・・・・得票数0

 

 優勝は、書評番号5、『あん』の書評を書いた、熊沢健児氏に決定いたしました。

 作品応募や投票にご参加くださった皆さま、いつも見守ってくださる皆さまに、心よりお礼を申し上げます。

2021年4月30日金曜日

センター閉室のお知らせ

児童文化研究センターは、5月3日(月)から7日(金)まで閉室とさせていただきます。
ご不便をおかけいたしますが、なにとぞご了承くださいませ。

新緑の美しい季節となりました。
どうぞお体にお気をつけてお過ごしください。

 

2021年4月28日水曜日

第4回書評コンクール 作品公開のお知らせ

 第4回書評コンクールへの応募作品を公開いたします。

 ご応募くださった皆様に心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 本日より5月19日(水)まで、センター構成員の皆様からの投票を受け付けたいと存じます。良い!と思った本の書評を一つ選び 、書評番号を本文に記入したメールを児童文化研究センターまでお送りください。最優秀作品の発表は、20日(木)です。皆様のご参加を、お待ちしております。


【書評】やなせたかし作・絵『チリンのすず』フレーベル館、1978年

主人公は羊の「チリン」。その名の由来は、首についた金色の鈴。

「ひつじなんて けがもしゃもしゃして たべにくいのに。みどりいろのくさのほうがおいしいのに。」

子羊のチリンには、オオカミが羊を食べるということも分からない。

しかし、ある日オオカミのウォーによってチリンの母は殺される。オオカミのウォーに弟子入りして…。

と、あらすじはこんな感じである。

羊と狼においては、多数の物語が存在する。

そしてその多くの物語では主人公の羊は孤独な狼の心を動かす存在として描かれている。

しかし現実では、狼は羊を生かしてそばに置くことはないし、羊自ら狼に近づくこともない。

そこには、フィクションにはあって現実にはないものがあると思う。

それは、「人間の感情」だろう。動物に感情があるのかないのかという討論になればこの書評を超えて多くの研究を重ねる必要があるが、確実に言えるのは、彼らには「人間の感情」はないということだ。しかし、そんな彼らに作者の「人間の感情」を加えるとどうだろう。

羊は、母のため狼にだって立ち向かうし、狼は餌である羊にだって心を開く。

他の動物にも、同じように同情や友情、愛情を感じるのが「人間の感情」の最大の特徴であるように思える。

「チリンのすず」でもそうだ。

チリンは、母を殺されたウォーへの憎しみと、おそらく母よりも長く弟子として連れ添ってきたウォーとの友情、両方を抱えている。

また、チリンのトレードマークである金色の鈴の音で、チリンの状況を示している。

”チリンのすずでおもいだす やさしいまつげを ほほえみを チリンのすずでおもいだす このよのさみしさかなしみを”

この文が物語の始まる前に書かれている。

子羊のチリンにとって、自分をかばって死んだ母が絶対的な正義であった。

よってその要因となったウォーは必然的に悪となるのだが、チリンの正義は、自分の中の、羊と狼の存在の曖昧さに自然移っていったのだと思う。

チリンは母を思い出す時、羊であったし、ウォーを思い出す時狼であったのではないか。

そしてそれは、読者サイドも同じで、羊であるチリンの気持ちで本を読み進めいつの間にか自分が羊なのか狼なのか、どちらの感情でいたら良いのかわからなくなる。

また、チリンの感情が多く描写されているのに対し、ウォーの感情はあまり描かれていない。

いっそウォーが最後まで完全な悪であったならば、この本を通して羊の感情で見ることができるのに、とも思った。

ウォーの感情を、読み手の「人間の感情」で考えさせるために、この作品は多くの人の心に残る作品となったに違いない。


***


第4回書評コンクール 投票方法は…
良い!と思った本の書評を一つ選び 、書評番号を本文に記入したメールをお送りください。
メール送り先: jido-bun@shirayuri.ac.jp

投票締め切り: 2021年5月19日(水)


この書評は、2021年春に開催された書評コンクールの応募作品です(書評番号2) 

 

【書評】エルジェ「タンタンの冒険」シリーズ、川口恵子訳、福音館書店、1983₋2007年

 この人と結婚したらかなり苦労しそうだけれども、親友だったら楽しそう。「タンタンの冒険」シリーズにおける主要登場人物の一人、ハドック船長のことだ。そんな風に思うのは、わたしがこのシリーズにハマったのが、大人になってからだったためかもしれない。幼い頃、漫画だからと手を出してみたものの、難しくて理解できなかった記憶がある。しかし、大人になってから読んでみると、すっかり夢中になった。

主人公の少年記者タンタンは、正義感ゆえに様々な事件に巻き込まれ、悪者に狙われながら命がけの冒険をくり広げる。ストーリー展開の面白さもさることながら、このシリーズの魅力は、なんといっても会話の妙にあるだろう。

シリーズ初期、タンタンは愛犬スノーウィとのコンビで行動し、多くの会話がこのコンビの間で交わされる。スノーウィも吹き出しで人語を話しているのだが、どうやらタンタンはスノーウィのことばを人語として理解しているわけではないらしい。それでも会話はかけ合いのように行われる。途中の巻から登場する刑事のデュポンとデュボンも、ことば遊びのような会話が楽しい。けれども、ひとたびハドック船長が登場し、会話に加わると、彼は圧倒的な存在感を放つ。船長の登場しない巻は物足りなく感じるほどだ。

第9作『金のはさみのカニ』でシリーズに初登場したとき、船長はなかなか情けない人物だった。悪い部下に騙されて酒浸りになり、悪事に利用され、タンタンに助けられるのだ。この時点で、彼はすでに救いようのないアルコール中毒になっている。何度も禁酒を誓いながら、誰も見ていない隙にちょいと一杯やろうとし、結果ひと瓶飲み干して酔っぱらい、とんでもないことをしでかす。口も悪い。すぐに怒って、悪態をつく。

 こうして書いてみると、児童文学作品の主人公の親友とはとても思えない。それでも、ハドック船長はぜひお近づきになりたい、魅力的な人物なのだ。喜怒哀楽が激しく、純粋で勇敢な人情家。そして、会話におけるすばらしい切り返し。ユーモアと機知に富んだ彼と会話を楽しめるなら、フランス語を学んでみようかなという気にさえなる。彼のよく口にする台詞「なんとナントの難破船」や「コンコンニャローのバーロー岬」が原文では何と言うのか知りたくて、フランス語の原書を購入してしまった。できるものなら、船長お気に入りの高級ウィスキー「ロッホ・ローモンド」も飲んでみたい(作者エルジェは架空の銘柄のつもりだったので、実在する「ロッホローモンド」とは別物だそう)。

 自力では禁酒に成功しなかった船長だが、シリーズの最終盤、アルコールを受け付けない体質になる。彼の健康のためにはいいことなのだが、ちょっぴり残念に思う読者は、わたしだけではないはずだ。


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第4回書評コンクール 投票方法は…
良い!と思った本の書評を一つ選び 、書評番号を本文に記入したメールをお送りください。
メール送り先: jido-bun@shirayuri.ac.jp

投票締め切り: 2021年5月19日(水)


 この書評は、2021年春に開催された書評コンクールの応募作品です(書評番号1) 

【書評】ロアルド・ダール作、クェンティン・ブレイク絵『魔女がいっぱい』清水達也・鶴見敏訳、評論社、2006年

 あなたは「魔女」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべますか?

 

 大きな壷をかき混ぜて、薬を作っている怪しいおばあさん?

 黒い帽子に、黒いマント?

 ほうきの柄に乗って、ひとっ飛び?

 それとも、素敵な魔法で人助け?

 

 いえいえ! 2度にわたって実写映画化された『魔女がいっぱい』には、このような特徴を持った魔女は、1人も登場しません。

 では、どんな魔女かというと……。 一見すると、一般の女性と何も変わりません。ごく当たり前の服を着て、ごく普通の家に住み、人並みに仕事をしています。

 しかし! その正体は恐ろしいもので、魔法を使って子どもを消そうと企んでいるのです。というのも、魔女は大の子ども嫌いだからです。

 加えて、「髪の毛が生えていない」「かぎ爪を持っている」など、奇妙な身体的特徴をいくつか持っています。魔女はカツラや手袋でこれらの特徴を隠しているので、一般の女性と魔女を判別するのは、非常に困難です。

 

 そんなわけで、主人公の男の子「ぼく」は、唯一の家族であるおばあちゃんから、魔女の恐ろしさについて、日頃から聞かされていたのでした。

ある日、「ぼく」は滞在していたホテルで、「英国児童愛護協会」と名乗る女性たちの集会に遭遇しました。しかし、その正体は偽りの姿で、イギリス中の魔女が集まる集会でした。カツラを外した魔女たちの禿頭の集団に、「ぼく」は仰天します。

「ぼく」は怯えながらも、魔女たちの集会を覗き見します。なんということでしょう! 魔女たちは、「人間をネズミに変身させる薬」を使って、国中の子どもを滅ぼす計画を立てていたのです。ところが運悪く、集会が終わろうとしたタイミングで「ぼく」は魔女たちに見つかってしまい、その薬によってネズミにされてしまうのです! 

ネズミになった「ぼく」は、おばあちゃんのところに行き、集会で見聞きことを全て話しました。そして、その会話をヒントに、「ぼく」はネズミの身体能力を活用して、国中の魔女を滅ぼす計画を思いつくのです。

さあ、はたして、「ぼく」は無事に計画を遂行できるのか? ネズミにされた「ぼく」はこの先、どうなるのか? その続きはぜひ、あなたの目で確かめてみてください。


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第4回書評コンクール 投票方法は…
良い!と思った本の書評を一つ選び 、書評番号を本文に記入したメールをお送りください。

メール送り先: jido-bun@shirayuri.ac.jp

投票締め切り: 2021年5月19日(水)


この書評は、2021年春に開催された書評コンクールの応募作品です(書評番号3) 

 

【書評】はやみねかおる『都会(まち)のトム&ソーヤ①』講談社YA!ENTERTAINMENT、2003年

イカダくだりも海賊ごっこもない冒険物語をご存知だろうか。

著者のはやみねかおるは、〈冒険する心〉があればいつだって、どこだって冒険はできるのだと語る。

 

塾通いに追われる中学生・内藤内人と、眉目秀麗で成績優秀な同級生・竜王創也。

三日月の浮かぶ春の夜、内人は夜の街を闊歩する創也の姿を見かけた。

翌朝、内人は気まずい空気を打ち破って創也に話しかける。

〈きみ、夜の散歩が好きなの?〉

創也の答えは、銀色の鍵と、〈気がむいたら、おいで〉ということば。

狭すぎる裏路地を進み、数々の罠(トラップ)を突破して辿り着いたのは、創也の夢を守るための空間〈砦(とりで)〉だった。

下水道やテレビ局に潜入し、ときには窮地を切り抜けながら、伝説のゲームクリエイター〈栗井栄太〉の正体に迫る。

 

内人は努力したいと思う夢を持てず、漫然と日々を過ごしてきた。

だが創也の一言で、夢に対する意識は一変する。

〈ぼくは、究極のゲームをつくりたいんだ〉

明確な夢を持ち、それを叶えるための努力を厭わない創也の姿に突き動かされるように、内人は宣言する。

〈しばらく、創也の夢に付き合うよ。そうしたら、ぼくの夢も見つかるかもしれないから〉

内人は他者の夢への同行を通して、おとなに訊かれたら答えるための夢ではなく、体の内から湧き出るような夢を探しにいく。

 

創也は〈冷静な研究者の視線〉と称して、常に世界から一歩距離を取り、事象の観察に徹してきた。

〈ぼくたちの砦(、、、、、、)のかぎだ。たいせつにしてくれ〉

そんな創也が内人という初めての仲間を迎え、〈砦〉の鍵を託し、〈究極のゲームづくり〉という共同作業に挑む。

また、〈砦〉を秘密基地のようだと言う内人に、創也はこう紹介している。

〈基地はたたかうための場所。だけど、砦はちがう。砦は、守るための場所だよ〉

〈竜王グループ〉の後継者という外部から与えられる役割。

それに甘んじることなく、夢を育むサンクチュアリである〈砦〉を拠点に、ゲームクリエイターの卵として、〈栗井栄太〉という越えなければならない存在と果敢に対峙する。

 

一風変わったところこそあれ、彼らは中学生、普段から難しいことばかり考えているわけではない。

〈平日半額!〉のハンバーガーにかぶりつくこともあるし、かわいい女の子からアプローチを受けることもある(どちらが内人でどちらが創也かは、敢えて記さないでおく)。

一方で、彼らの夢に対する行動には、心理学者E.H.エリクソンのいう同一性拡散期における〈自分は何者か〉というテーマに真摯に向き合い、答えを出そうとするさまがありありと窺えるのである。

 

本作の冒険の舞台は都会だ。

しかし、自分が自分の主人公になるまでの軌跡も、また立派な冒険といえるのではないか?

 

YA文学はこどもの読み物、都会で冒険はできない、狭いところに閉じ込められたら万事休す…

固定観念をティーンエイジャーの力で吹き飛ばし、日常に潜む非日常をフレッシュに描き上げる。


【原作】はやみねかおる『都会まちのトム&ソーヤ①』講談社YA!ENTERTAINMENT、2003年

【映像】監督:河合勇人・脚本:徳尾浩司『都会まちのトム&ソーヤ』主演:城桧吏、2021年7月30日公開予定、イオンエンターテイメント


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第4回書評コンクール 投票方法は…
良い!と思った本の書評を一つ選び 、書評番号を本文に記入したメールをお送りください。
メール送り先: jido-bun@shirayuri.ac.jp

投票締め切り: 2021年5月19日(水)


この書評は、2021年春に開催された書評コンクールの応募作品です(書評番号4)