2012年11月28日水曜日

遠藤周作『黄色い人』のエピグラフの出典について


遠藤周作の『黄色い人』は、エピグラフとして二つの文章がかかげられ、一つは「(童話より)」、もう一つは「(黙示録)」となっています。この前者すなわち「神さまは宇宙に」と始まる文章は、児童文学の雑誌『赤い鳥』第1巻第1号に掲載されている、丹野てい子の文章(P.51)に似ていることがわかりました。一部に文章の異同があるものの、出典であるといってよい程度に内容が似ています。この小品は、同誌の目次における表記も、「(童話)」となっていることから、「(童話より)」という記述とも一致しています。
 
このエピグラフの出典について最初に質問をいただいたのは、2002年に白百合女子大学大学院文学研究科言語・文学専攻において博士号を取得された李平春さん(博士論文「遠藤周作文学の〈神〉像―〈父なる神〉から〈愛の神〉へ」)でした。しかし、当時は、わたしに回答できる知識がなく、不明の旨の返答をしたのでした。その後、その問いが気になっていたことが、今回の気づきにつながったので、ここに李平春さんに感謝したいと思います。
 
この事実は、約2年前に判明していたのですが、適当な発表の場がなかったため、この度、児童文化研究センターのブログにおいて公表することとしたものです。浅学ゆえ、あるいは研究者間では既知の事柄であるのかもしれません。その場合は、恐縮ですが、関連する情報と併せてご教示をいただければ幸いに存じます。
 
なお、このテーマについての詳細な研究は、昭和女子大学日本語日本文学科の笛木美佳先生のグループおよび白百合女子大学国語国文学科助教(2011年度末退職)の加藤憲子さんによって進められています。
 
このテーマは、遠藤周作研究と児童文学研究の共同作業によって行なわれるべきものかと思います。それぞれが知見を提供し合うことで、より研究が進展することを願っています。
 
 
(白百合女子大学児童文化研究センター前所長・石井直人)

2012年11月20日火曜日

☆日本児童文学学会創立50周年記念論文☆

日本児童文学学会が創立50周年を記念し、募集した論文の中から、当センター研究員2名の応募論文が佳作となりました!!

日本児童文学学会創立50周年記念論文の結果は以下の通りです☆
・入選作   なし
・佳作 2編


鈴木宏枝氏(白百合女子大学児童文化研究センター研究員)
「イギリスファンタジーにおけるポストコロニアリズムの問いかけ

 ―サバルタンとしての借り暮らしの小人―」

沢崎友美氏(白百合女子大学児童文化研究センター研究員)
「原発問題に挑む児童文学から<物語の力>を探る 
 ―たつみや章『夜の神話』を中心に―」

表彰式は10月27日千葉大学で開催された日本児童文学学会第51回研究大会(創立50周年記念大会)の総会に先立ち行われました。

お二人よりコメントを頂きましたので、掲載いたします!


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「ポストコロニアリズムの勉強をしている最中に寄り道をして書いた論文を評価いただき、大変うれしく、また、これからの励みにしたいと思います。研究への示唆をいただきました先生方に、心より御礼申し上げます。」

鈴木宏枝



「昨年の震災の際、真っ先に思い出したのは、子どもの頃に読んだ『夜の神話』のことでした。「今」書かねば! と、手前勝手な使命感にかられて仕上げた論文です。問題を考えるための、ひとつの足場を作れれば、と思いました。」

沢崎友美

2012年11月8日木曜日

ちいさい秋みつけた

学内の木々も色づきはじめ、寒さが身にしみるようになって参りましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

秋になるとつい口ずさんでしまうあの童謡、「ちいさい秋みつけた」の作詩は、歌謡曲「悲しくてやりきれない」「リンゴの唄」などの作詩でも有名な、故サトウハチロー氏です。

サトウ氏は、詩だけでなく、ユーモア小説や少年少女小説も数多く執筆されており、当大学の図書館にもたくさんの著書がおさめられているようです。

読書の秋に、一度お読みになってみてはいかがでしょうか★